小野湖山

小野湖山：幕末維新を駆け抜けた漢詩人の生涯

小野湖山（おの こざん）は、文化11年（1814年）に近江国で生まれ、明治43年（1910年）に97歳で没した漢詩人です。名は長愿、字は舒公、通称は仙助・侗之助、別号に玉池仙史と称しました。大沼枕山、鱸松塘とともに、明治の三詩人と称されています。

生い立ちと学問

湖山は、三河吉田藩領であった近江国浅井郡高畑村（現滋賀県長浜市高畑町）で、医師・横山玄篤（東湖）の長男として誕生しました。横山家は加賀藩家老横山党と同族で、平安時代前期の公卿・小野篁の後裔と伝えられ、後に小野へ改姓しました。

当初は家業を継ぐため彦根藩医に医術を学びましたが、興味を持てず、近村の儒者・大岡右仲（松堂）に経書史書を学びました。文政9年（1826年）には父と共に京都で頼山陽に面会し、朱子学漢詩を学ぶことを決意しました。天保元年（1830年）には、九州への漫遊の途上彦根に立ち寄った梁川星巌に入門を許され、翌年江戸へ向かい、尾藤水竹・藤森弘庵・林大学頭に師事しました。梁川星巌が起こした玉池吟社の社友となり、頭角を現しました。

藩儒として、勤皇の志士として

江戸において生地の領主である松平信古の求めに応じ、三河吉田藩儒者となり藩政に関与、後に正式に藩士に取り立てられました。天保9年（1839年）には水戸に出遊し、藤田東湖・武田耕雲斎と交友し徳川斉昭と面会し、勤皇の念を篤くしました。師である梁川星巌、頼三樹三郎、藤森天山、勝野台山等と共に国事に奔走していたところ、安政の大獄が起こり、吉田藩は湖山の身を守るため吉田城内に幽閉しました。

桜田門外の変後、幽閉を解かれた湖山は吉田に留まり藩政に関与し、後に京二条家より招かれると藩主と共に上京、朝廷より国事掛に命じられ、幕末より勤皇の士として巖谷一六等と奔走しました。

明治維新後

明治維新後は従五位に叙せられ、新政府の総裁局権参事・記録局主任となりました。しかし、明治6年（1873年）の廃藩置県の後、家督を子息に譲り、東京で詩酒自適の生活を送りました。その間、政府の再要請を固辞し、詩壇の重鎮として詩作を続けました。明治16年（1883年）には、明治天皇より硯を賜り、感激して書斎を賜硯楼と名付けました。

明治43年（1910年）4月10日、太東岬の別宅において老衰により死去。享年97。湖山は少壮より経世の志し有り詩を以って家名の有ることを欲せず。詩は豪胆淡雅・格調が高いと評されています。

小野湖山は、激動の時代を生き抜き、漢詩を通してその思想と心情を表現し続けた人物でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

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