中新井村

中新井村：練馬の歴史を刻んだ消えた村の物語

中新井村は、かつて東京府北豊島郡に存在した村です。現在の東京都練馬区豊玉上、豊玉北、豊玉中、豊玉南、中村北、中村、中村南にあたる地域を包含していました。その歴史は古く、1631年の検地記録から確認できます。地名については中荒井、中新居といった表記も見られ、その由来は定かではありませんが、新たな集落の形成や誤記の可能性などが指摘されています。

地理と水路

中新井村は、千川上水と中新井川という二つの水路に恵まれた地域でした。千川上水は1696年の通水以降、灌漑用水として利用され、村の農業を支える重要な役割を果たしました。1707年には灌漑用水としての利用が正式に認められました。

歴史の変遷

中新井村の歴史は、江戸時代から明治時代、そして昭和時代へと続きます。板倉宗家の知行地であった時期を経て天領となり、1827年の文政の改革では中野村を大惣代とする組合村に所属しました。『新編武蔵風土記稿』には豊島郡野方領の一部として記載されています。

明治維新後、武蔵知県事の管轄下に置かれ、品川県の設置、寄場組合の廃止などを経て、1872年には東京府に編入されました。1878年には郡区町村編制法の施行により、東京府北豊島郡中新井村となりました。

1889年の町村制施行に伴い、隣接する中村を吸収合併し、明治の大合併を経験します。中新井と中村はそれぞれ大字として存続しました。しかし、1932年には東京府東京市板橋区に編入され、中新井村は廃止されました。その後、中新井町と中村町が設置され、1940年には中新井町が豊玉と改称されています。

生活と文化

中新井村には、氷川神社、八幡神社、南蔵院、正覚院といった寺院や神社が存在し、人々の信仰生活を支えていました。教育機関としては、武蔵高等学校、富士見高等女学校、中新井村実業補習学校、中新井村青年訓練所、豊玉尋常高等小学校、中新井幼稚園などが設置され、村の教育水準向上に貢献しました。

交通手段としては、武蔵野鉄道（現在の西武池袋線）の中村橋駅が利用可能でした。また、乗合自動車も運行され、中野駅と中新井村を結ぶ路線がありました。道路網としては、府費支弁道である埼玉道や、関道、清戸道、杉並道などが整備されていました。良弁塚なども村の重要な名所旧跡として知られていました。

まとめ

中新井村は、その歴史的変遷の中で、農業、教育、交通網の整備などを通して、地域の繁栄に貢献しました。しかし、東京市の拡大という時代の流れの中で、消滅という運命を辿ることとなりました。現在の練馬区の街並みの中に、中新井村の歴史と人々の暮らしが刻まれていることを、私たちは忘れてはならないでしょう。 中新井村の歴史は、練馬区の歴史、ひいては東京の歴史を理解する上で重要な一端を担っているといえます。残された史料や記録を基に、中新井村の歴史を紐解き、未来へと繋げていくことが大切です。

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