中期業務見積り

中期業務見積り（中業）とは

中期業務見積り（ちゅうきぎょうむみつもり、Mid-Term Program）は、日本の自衛隊における中期的な防衛力整備計画です。略称は「中業」です。これは、国防会議や閣議決定による正式な防衛力整備計画ではなく、防衛計画の大綱に基づき、防衛庁内部で策定される、防衛行政に関する中期的な方向性を示すものです。具体的な装備調達や部隊編成に関する見積もりを含み、各年度の業務計画や予算要求の基礎として活用されます。

概要

1976年（昭和51年）の防衛計画の大綱決定以降、それまで複数年を対象としていた防衛力整備計画は廃止され、1977年（昭和52年）度からは単年度予算方式が導入されました。しかし、防衛力整備には中長期的な視点が不可欠であるため、防衛庁内では中期的な整備計画の必要性が認識されました。

そこで、1977年（昭和52年）4月に「防衛諸計画の作成等に関する訓令」が制定され、防衛庁限りの計画として「中期業務見積り」が作成されるようになりました。中業は、原則として作成年度の翌々年度から5年間を見積もり、陸上自衛隊、海上[[自衛隊]]、航空自衛隊の主要事業に関する計画を策定しました。この見積もりは固定的なものではなく、毎年度見直しが行われ、3年ごとに新たな見積もりが作成されました。

五三中業（1978年～1984年）

1978年（昭和53年）に作成された「五三中業」は、1980年（昭和55年）度から1984年（昭和59年）度までを対象とした防衛庁内限りの計画です。この計画では、防空、対潜、水際防御、電子戦、継戦能力、抗堪性などの強化が重視されました。総経費は18兆4,000億円と見積もられました。

主要整備内容

陸上自衛隊: 第7師団の機甲師団化、四国への混成団新編。
海上[[自衛隊]]: 沖縄航空隊を第5航空群に改編。
航空自衛隊: 警戒航空隊を新編し、早期警戒体制を強化。
予備自衛官: 陸上自衛隊と航空自衛隊で増員、海上[[自衛隊]]で新規採用開始。
情報・通信: 防衛マイクロ回線の整備、自動警戒管制組織の近代化。
人事施策: 定年延長、就職援護の充実、医療施設の充実。
教育訓練: 演習場の整備、国外派遣訓練の充実、訓練装置の導入。
共通事項: 弾薬備蓄の増加、即応性向上のための検討。

主要装備調達計画

各装備の具体的な調達計画については詳細な記述は割愛します。

五六中業（1983年～1986年）

1981年（昭和56年）に策定された「五六中業」は、1983年（昭和58年）度から1986年（昭和60年）度までを対象とした防衛庁内限りの計画です。この計画は、国防会議に付議されることとなり、シビリアン・コントロールの観点からも重要な意味を持ちました。装備の近代化を推進しつつ、財政負担の軽減にも留意することとされました。

主要整備内容

陸上自衛隊: 作戦基本部隊の編制近代化を検討。
海上[[自衛隊]]: 新装備導入に伴い隊員を逐年増加。
航空自衛隊: 航空教導団（仮称）を新編し、航空救難態勢を強化。
教育訓練: 新装備に対応した教材や訓練装置の整備、米軍との共同訓練、硫黄島訓練施設の整備。
共通事項: 弾薬備蓄の推進、機雷・魚雷の整備、航空基地の抗堪性向上。
研究開発: 地対艦誘導弾、新戦車、新高射機関砲など、国産装備の開発。
* その他: 航空機騒音の低減、水質汚濁防止、海洋気象観測能力の向上。

56中業では、防衛大綱に定める「防衛の構想」に基づき、防衛力を質・量両面から整備することを目標としていました。正面装備の取得に必要な経費は、1982年度価格で4兆4,000億円から4兆6,000億円程度と見積もられました。

主要装備調達計画

各装備の具体的な調達計画については詳細な記述は割愛します。

装備調達実績

各装備の具体的な調達実績については詳細な記述は割愛します。

次期中業と中期防衛力整備計画へ

1984年（昭和59年）には、1986年（昭和61年）度から1991年（昭和65年）度を対象とする「五九中業」が策定される予定でしたが、防衛政策への関心の高まりを受け、正式な政府計画として中期防衛力整備計画が策定されることになりました。

この変化は、厳しい財政状況を反映し、必要な経費を抑制するとともに、適切な文民統制を確立するため、防衛庁内限りの資料ではなく、政府の責任において中期的な防衛力整備の方向性を示す必要性に基づいています。1985年（昭和60年）9月18日に、中期防衛力整備計画が国防会議および閣議で決定され、中業は中期防へと発展しました。

まとめ

中期業務見積りは、単年度予算制度下で、中長期的な視点に基づいた防衛力整備を進める上で重要な役割を果たしました。防衛庁内部での計画策定を通じて、自衛隊の装備や組織の近代化を推進し、中期防衛力整備計画へと繋がる重要なステップとなりました。

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