中村光男 (文化人類学者)
中村 光男（なかむら みつお、1933年10月19日 - ）は、日本の文化人類学者であり、千葉大学名誉教授です。特に東南アジア、とりわけインドネシアのイスラーム社会運動に関する研究で国際的な名声を得ており、その中でもイスラーム近代主義運動であるムハマデイヤーの研究は特筆されます。
旧関東州大連市に生まれ、幼少期を過ごしました。父は満州電業の技師として勤務していましたが、戦後ソ連に抑留され、帰国後にキリスト教の牧師となりました。家族は敗戦後、中国東北部長春市で数年間を過ごし、1947年に日本へ引き揚げました。
東京都立国立中学校、東京都立新宿高等学校を経て、1952年に東京大学に入学。中学・高校時代からすでに青年共産同盟（青共）に加わり、わだつみ会や反戦学生同盟といった学生運動組織で活動を開始していました。1953年には東京大学教養学部自治会の副委員長を務めるなど、学生運動の中心で活動します。特に1955年の日本共産党六全協以降の学生運動の停滞期には、その再建に尽力し、1956年には全学連中央執行委員を務めました。1956年から1958年にかけては、日本反戦学生同盟（AG）を再建して全国委員長を務め、さらに1958年には反戦学同を社会主義学生同盟（社学同）へと発展的に解消させ、その初代委員長に就任しました。同年後半には共産主義者同盟（ブント）の創立にも参加するなど、1960年の安保闘争に至るまで、新左翼運動の主要な活動家の一人として、時代の変革を目指す運動の渦中に身を置きました。
1960年に東京大学文学部哲学科を卒業した後、中村氏は大きく方向転換し、文化人類学の道へと進むことを決意します。大学院に進学し、1965年に修士号を取得。同年、フルブライト奨学生としてアメリカのコーネル大学に留学する機会を得ました。ここでは、インドネシアにおけるイスラーム近代主義運動である「ムハマデイヤー」に関する集中的な研究に着手。1970年から1972年にかけてはインドネシア国内での詳細なフィールドワークを行い、その実証的な成果を基に博士論文を執筆しました。1976年、コーネル大学よりPh.Dを取得し、文化人類学者としての確固たる基盤を築きました。
博士号取得後は、国際的な学術キャリアを展開します。南オーストラリアのアデレード大学で人類学部のシニア・ティーチング・フェロー（1974-75年）を務めたのを皮切りに、ジャカルタのインドネシア社会科学研修センターのリサーチ・アソシエイト（1976-77年）、オーストラリア国立大学アジア太平洋研究所およびアジア研究学部での客員研究員（1978-82年）、ハーヴァード大学の世界宗教研究所客員研究員（1981-82年）など、各国の主要な研究機関を渡り歩き、知見を深めました。1983年には日本の千葉大学文学部行動科学科の教授として着任。以後、同大学を拠点に研究・教育活動を行い、多くの後進を育てました。その間、1993年にはフルブライト・シニアフェローとして再びハーヴァード大学中東研究センターに客員研究員として招聘されています。
1999年に千葉大学を定年退職し、同大学の名誉教授の称号を得ました。その後も研究活動は精力的に続けられ、2001年から2002年にかけては中央大学総合政策研究大学院の客員教授を務め、2004年には再度ハーヴァード大学中東研究センターの客員研究員として研究交流を行っています。
中村氏の研究は、長期間にわたる現地調査に根差した実証性が特徴です。特にインドネシア最大のイスラーム社会運動であるムハマデイヤーに関する詳細な研究は、その歴史的展開や社会における役割を深く解明し、国際的に高い評価を得ています。その代表的な成果は、博士論文を改訂した著作『The Crescent Arises over the Banyan Tree』として刊行され、この分野における基盤的な著作として広く読まれています。
その功績は国内外で認められています。1998年にはインドネシア共和国駐日大使より日イ友好感謝状が贈られたほか、2017年にはインドネシア政府教育文化大臣より「文化功労賞」を、さらにムハマデイヤーからも「ムハマデイヤー賞」を授与されるなど、インドネシア側からの顕彰を数多く受けています。
また、研究者としての知見を活かした社会貢献活動にも積極的に関わりました。1999年には日本政府派遣インドネシア総選挙監視団の副団長を務め、2004年にも同国の総選挙および大統領選挙に関する国際監視団に参加。日本国際協力銀行（JBIC）のシニア・リサーチ・アドヴァイザーも務めるなど、インドネシアの民主化や開発支援にも寄与しています。
戦後の激動期に学生運動のリーダーとして活動した後、文化人類学へと転身し、インドネシア・イスラーム研究の第一人者として世界的な地位を確立した中村光男氏。その学術的な貢献はもとより、研究者としての知見を社会に還元する活動を通して、日本とインドネシアの架け橋としても重要な役割を果たしました。多数の著書、共著、編著、論文を発表しており、事典類への寄稿も数多く手がけています。
旧関東州大連市に生まれ、幼少期を過ごしました。父は満州電業の技師として勤務していましたが、戦後ソ連に抑留され、帰国後にキリスト教の牧師となりました。家族は敗戦後、中国東北部長春市で数年間を過ごし、1947年に日本へ引き揚げました。
東京都立国立中学校、東京都立新宿高等学校を経て、1952年に東京大学に入学。中学・高校時代からすでに青年共産同盟（青共）に加わり、わだつみ会や反戦学生同盟といった学生運動組織で活動を開始していました。1953年には東京大学教養学部自治会の副委員長を務めるなど、学生運動の中心で活動します。特に1955年の日本共産党六全協以降の学生運動の停滞期には、その再建に尽力し、1956年には全学連中央執行委員を務めました。1956年から1958年にかけては、日本反戦学生同盟（AG）を再建して全国委員長を務め、さらに1958年には反戦学同を社会主義学生同盟（社学同）へと発展的に解消させ、その初代委員長に就任しました。同年後半には共産主義者同盟（ブント）の創立にも参加するなど、1960年の安保闘争に至るまで、新左翼運動の主要な活動家の一人として、時代の変革を目指す運動の渦中に身を置きました。
1960年に東京大学文学部哲学科を卒業した後、中村氏は大きく方向転換し、文化人類学の道へと進むことを決意します。大学院に進学し、1965年に修士号を取得。同年、フルブライト奨学生としてアメリカのコーネル大学に留学する機会を得ました。ここでは、インドネシアにおけるイスラーム近代主義運動である「ムハマデイヤー」に関する集中的な研究に着手。1970年から1972年にかけてはインドネシア国内での詳細なフィールドワークを行い、その実証的な成果を基に博士論文を執筆しました。1976年、コーネル大学よりPh.Dを取得し、文化人類学者としての確固たる基盤を築きました。
博士号取得後は、国際的な学術キャリアを展開します。南オーストラリアのアデレード大学で人類学部のシニア・ティーチング・フェロー（1974-75年）を務めたのを皮切りに、ジャカルタのインドネシア社会科学研修センターのリサーチ・アソシエイト（1976-77年）、オーストラリア国立大学アジア太平洋研究所およびアジア研究学部での客員研究員（1978-82年）、ハーヴァード大学の世界宗教研究所客員研究員（1981-82年）など、各国の主要な研究機関を渡り歩き、知見を深めました。1983年には日本の千葉大学文学部行動科学科の教授として着任。以後、同大学を拠点に研究・教育活動を行い、多くの後進を育てました。その間、1993年にはフルブライト・シニアフェローとして再びハーヴァード大学中東研究センターに客員研究員として招聘されています。
1999年に千葉大学を定年退職し、同大学の名誉教授の称号を得ました。その後も研究活動は精力的に続けられ、2001年から2002年にかけては中央大学総合政策研究大学院の客員教授を務め、2004年には再度ハーヴァード大学中東研究センターの客員研究員として研究交流を行っています。
中村氏の研究は、長期間にわたる現地調査に根差した実証性が特徴です。特にインドネシア最大のイスラーム社会運動であるムハマデイヤーに関する詳細な研究は、その歴史的展開や社会における役割を深く解明し、国際的に高い評価を得ています。その代表的な成果は、博士論文を改訂した著作『The Crescent Arises over the Banyan Tree』として刊行され、この分野における基盤的な著作として広く読まれています。
その功績は国内外で認められています。1998年にはインドネシア共和国駐日大使より日イ友好感謝状が贈られたほか、2017年にはインドネシア政府教育文化大臣より「文化功労賞」を、さらにムハマデイヤーからも「ムハマデイヤー賞」を授与されるなど、インドネシア側からの顕彰を数多く受けています。
また、研究者としての知見を活かした社会貢献活動にも積極的に関わりました。1999年には日本政府派遣インドネシア総選挙監視団の副団長を務め、2004年にも同国の総選挙および大統領選挙に関する国際監視団に参加。日本国際協力銀行（JBIC）のシニア・リサーチ・アドヴァイザーも務めるなど、インドネシアの民主化や開発支援にも寄与しています。
戦後の激動期に学生運動のリーダーとして活動した後、文化人類学へと転身し、インドネシア・イスラーム研究の第一人者として世界的な地位を確立した中村光男氏。その学術的な貢献はもとより、研究者としての知見を社会に還元する活動を通して、日本とインドネシアの架け橋としても重要な役割を果たしました。多数の著書、共著、編著、論文を発表しており、事典類への寄稿も数多く手がけています。
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