中村又五郎 (初代)

初代 中村又五郎の生涯と業績

初代中村又五郎（しょだい なかむら またごろう）は、1885年1月1日に大阪で生まれました。彼は明治から大正にかけて、歌舞伎の重要な役者として名を馳せ、多くのファンに愛されました。屋号は「播磨屋」で、定紋には揚羽蝶を、替紋には向い菱を用いていました。また、俳名には「紫琴」として知られています。

芝居の道の始まり

彼の演技のキャリアは、明治23年（1890年）の初舞台から始まりました。このとき、「中村正太郎」の名で登場しました。彼は9歳という若さで、早くから注目を集める少年役者として成長しました。明治31年（1898年）には東京に移り、当時の新富座で「少年劇」と称される子供芝居に参加しました。ここでの活動が彼の名声を高める一助となり、同期の役者たちと共に作品を磨いていきました。

その年の正月、彼は「中村又五郎」と改名し、さらなる飛躍を目指しました。著名な作家である岡本綺堂は、彼の登場を賞賛し、当時の状況を「又五郎は中村紫琴の遺子であり、大阪では子役中の麒麟児と呼ばれていた」と表現し、期待の大きさを物語っています。しかし、初舞台では「曾我の対面」の鬼王と「鞘当」の留女の二役を演じたものの、特に観客の注目を集めることはありませんでした。けれども、その後の活躍により、徐々に彼の実力が認められるようになっていきました。

大活躍の時期

子供芝居の人気が減少していく中、彼は二代目市川左團次が設立した自由劇場に加わり、新たな表現に挑みました。変化を受け入れ、名作『心中天網島・河庄』の治兵衛や『恋飛脚大和往来』の忠兵衛を演じることで、多くの東京の観客の心を掴みました。彼の演技は、和事を中心に展開され、時に小芝居に根ざした作品においても、卓越した技術を発揮しました。

彼の持ち味は、柔軟な演技力と情熱にあり、彼自身の芸に対する真剣な姿勢が舞台に花を添えました。しかし、彼のキャリアは短命に終わり、三十代半ばという若さでこの世を去ることになりました。彼の子どもも二代目中村又五郎として世に出ており、その血脈は歌舞伎の伝統を引き継いでいます。

終わりに

初代中村又五郎の人生は、劇場という厳しい世界で奮闘し続けたエネルギッシュなものでした。彼の目覚ましい業績は、今なお歌舞伎の中で語り継がれており、その名は後の世代にも影響を与え続けています。彼の足跡を振り返ることで、日本の伝統芸能への理解と敬意を深めることができるでしょう。

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