自由劇場

自由劇場の概要

自由劇場（じゆうげきじょう）とは、作家の小山内薫と歌舞伎俳優の二代目市川左団次によって始められた新劇運動です。この劇団は1909年から1919年の間に9回の公演を行い、日本の演劇界における大きな転換点となりました。自由劇場の特徴は、専用の劇場や俳優を持たない「無形劇場」であり、会員制の組織として運営されていました。また、その活動は年に2回の公演を目指していました。

自由劇場では、イプセンの『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』やゴーリキーの『夜の宿』、チェーホフの『犬』などをはじめ、森鷗外や吉井勇、秋田雨雀による様々な戯曲が上演されました。このような演目は、知識人や若者たちに広く受け入れられ、新劇運動の先駆けとして評価されました。

設立背景

二代目市川左団次は、事件の初めに市川莚升という名で知られていました。彼は川上音二郎が行った新演劇運動に魅了され、自らも新しい演劇の世界に挑戦することを決心しました。1906年には左団次の名を襲名し、その後、収益を元に9か月間の海外旅行へと出かけます。欧米のさまざまな舞台を視察し、独自の演出法を模索しました。しかし帰国後、歌舞伎界の改革を試みたものの、期待されていた成果は得られず、松居松葉の辞任を経て、新たに自由劇場の設立へ向かうこととなりました。

小山内薫との意気投合も大きな要素であり、彼らは翻訳劇を主軸に据えた新しい劇の形を目指しました。彼らはともに若き日にユーモアたっぷりの雑俳を学びあった親しい仲間でありました。

公演の開始と進行

公演は、初回の1909年11月に有楽座での『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』の上演から始まりました。この作品はイプセンの著作であり、日本では初めて本格的に舞台化されました。小山内は、翻訳の際に著名な作家である森鷗外に協力を仰ぎ、海外の舞台演出について情報を集めつつ、実に手探りの状態で準備を進めました。

最初の公演は大きな成功を収め、知識人や若者たちに好評を博しました。この活動を通じて、自由劇場は日本における新劇運動の象徴としての地位を確立します。以降の公演は、徐々に広がりを見せ、第4回（1911年）までは有楽座で行われ、その後は帝国劇場に移行しました。公演の頻度は初めのうちは年2回でしたが、次第に年1回のペースへと落ち着いていきます。

各公演の詳細

自由劇場が上演した作品には、次のような作品があります。

• - 第1回公演 (1909年11月): ジョン・ガブリエル・ボルクマン（イプセン）
• - 第2回公演 (1910年5月): 出発前半時間（ヴェーデキント）、生田川（森鷗外）、犬（チェーホフ）
• - 第3回公演 (1910年12月): 夜の宿（ゴーリキー）、夢介と僧と（吉井勇）
• - 第4回公演 (1911年6月): 歓楽の鬼（長田秀雄）、河内屋与平衛（吉井勇）、第一の暁（秋田雨雀）、奇蹟（メーテルリンク）
• - 第5回公演 (1911年11月): 寂しき人々（ハウプトマン）
• - 第6回公演 (1912年4月): 道成寺（萱野二十一）、タンタジールの死（メーテルリンク）
• - 第7回公演 (1913年10月): 夜の宿（ゴーリキー）
• - 第8回公演 (1914年10月): 星の世界へ（アンドレーエフ）
• - 第9回公演 (1919年9月): 信仰（ブリウ）

公演はすべて特定の劇場で行われ、特に初期の作品が有楽座で上演されたことから、自由劇場の名声が広まることとなりました。日本の演劇における重要な足跡を残した自由劇場は、演劇の発展に大きな貢献を果たしました。

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