中村幸司

中村幸司（なかむらこうじ）氏は、1962年生まれの日本のジャーナリストです。元日本放送協会（NHK）の報道記者および解説委員を務め、さらに一級建築士としての顔も持ちます。現在は帝京大学グループで教授として教鞭をとっています。

略歴と専門性

東京工業大学工学部建築学科を卒業後、同大学大学院の社会開発工学専攻で研究を修めました。専門分野は幅広く、医療、建築、科学といった領域を中心に活動しています。また、一級建築士の資格に加え、地盤品質判定士や応急危険度判定士の資格も有しており、特に都市や建築の安全問題に関する知見に長けています。

2025年には、長年にわたり公共放送を通じて都市や建築の安全問題について分かりやすく解説し、建築文化の醸成に貢献した功績が認められ、日本建築学会より文化賞を受賞する予定です。

NHKでのキャリア

1988年にNHKに入局後、京都放送局や報道局科学文化部でキャリアをスタートさせました。初期には薬害エイズ問題や臓器移植といった医療分野の報道に深く携わっています。その後、長野放送局や再び科学文化部での勤務を経て、ラジオニュースの担当となりました。

2011年には、科学を身近に感じてもらうためのラジオ番組企画「みんなで科学ラボラジオ」を自ら提案。山田敦子氏らとともに約2年間にわたり放送しましたが、その後番組は終了しています。

2013年に解説委員に就任してからは、これまでの専門性を活かし、医療、科学、建築、交通など、多岐にわたる分野の取材・報道および解説にあたっています。

特筆される解説事例

解説委員としての活動の中で、特に注目された事例がいくつかあります。

STAP細胞論文問題

2014年には、STAP細胞の論文発表者である研究員の小保方晴子氏を巡る問題を、報道番組『時論公論』で解説しました。その際、小保方氏が早稲田大学で取得した博士号に関する論文について、「他者の論文を流用して作成されており、不正行為に該当する」と具体的に指摘しました。この放送内容に対しては、学術論文に著作権は存在しないため、人権侵害にあたるのではないか、といった批判がインターネット上で一部見られました。しかし、後に早稲田大学は小保方氏の論文に不正行為があったことを正式に認め、博士学位を取り消すと発表しています。

新国立競技場建設問題

2015年には、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の建設計画に関する議論に際し、建設費用から設計内容に至るまで、幅広い視点から多角的な解説を行い、計画の課題や問題点を指摘し続けました。

著書

その専門知識は書籍としてもまとめられています。

『知らないと恥を書く最新の科学の話』
2019年3月に角川新書から発刊されました。最新の科学トピックについて、一般読者にも分かりやすく解説した一冊です。帯には、ジャーナリストの池上彰氏による「読めば世界が広がる一冊です」という推薦文が寄せられています。

『基礎科学で未来をつくる: 科学的意義と社会的意義』
2019年12月に丸善出版より、多くの著名な研究者らとの共著で発刊されました。この書籍では、基礎科学の重要性とその社会における意義について論じています。共著者には、村山斉氏、常田佐久氏、田村裕和氏、櫻井博儀氏、前野悦輝氏、岡本拓司氏、梶田隆章氏といった科学界の第一人者たちが名を連ねています。