中村時蔵 (4代目)

四代目 中村 時蔵の生涯

四代目中村時蔵（なかむら ときぞう）は、1927年12月1日に東京で生まれた歌舞伎役者です。本名は小川茂雄であり、彼の属する屋号は播磨屋、定紋は揚羽蝶、替紋は蔓片喰となっています。時蔵はその美貌と揺るぎない演技力で、歌舞伎界における若手女形として確固たる地位を築いていきました。

初舞台と襲名の経緯

三代目中村時蔵の次男として恵まれた環境に生まれ、彼は1936年11月に東京歌舞伎座で二代目中村梅枝の名で初舞台を踏みました。彼の才能は早くから開花し、その後、1953年4月には六代目中村芝雀を襲名しました。この襲名は、当時後継者が存在しなかった中村雀右衛門の名跡をにらんだものでした。さらに、兄・二代目中村歌昇の急な病気により、時蔵は父の後を継ぐ立場となり、1960年4月には四代目中村時蔵を襲名しました。

襲名後、彼の人気は急上昇し、主要な公演に次々と出演しました。特に、東京歌舞伎座での『八重桐廓噺』や『妹背山婦女庭訓』などの舞台で、その実力を示しました。しかし、これらの公演により、彼の疲労も蓄積されていきます。

壮絶な舞台人生

四代目中村時蔵は清楚な芸を身につけた美しい女形として、叔父の十七代目中村勘三郎からも注目され、舞台に欠かせない存在となりました。頻繁な公演スケジュールは彼の体力を奪い、次第に睡眠薬への依存が進行します。彼は公演の先々での休む暇もないほどの日々を過ごし、その疲労は深刻な問題へと発展していきました。

1962年1月、34歳という若さで睡眠薬による事故によって突然亡くなりました。彼の死は歌舞伎俳優たちにとって大きな痛手であり、時蔵の才能を惜しむ声は多くのファンから寄せられました。

次代とその影響

四代目中村時蔵の死後、その名跡は長男の三代目中村梅枝が1981年に五代目時蔵を襲名するまで19年間不在となりました。この期間において、五代目坂東玉三郎が人気を博していたため、「中村時蔵」の地位は相対的に低下しました。また、兄・歌昇が病気で引退し、弟たちも舞台に恵まれずに映画界に移行することで、播磨屋時蔵一門は次代を担うべき五兄弟全員が歌舞伎界から遠ざかってしまいました。そして彼らの子どもたちは、歌舞伎界での厳しい現実に直面し、辛酸を舐めることになったのです。

家族と後継者

時蔵の家族には、長男に中村萬壽（五代目時蔵改め）、次男には二代目中村錦之助がいます。彼らもまた、歌舞伎界においてその名を残し、四代目の名楯を継承するべく挑んでいます。彼のバトンは、作品と共に未来の世代へと引き継がれていくことでしょう。

まとめ

四代目中村時蔵の生涯は、充実した舞台に彩られたものの、短いものでした。その美しさと演技力は、多くの人々に感動を与え、歌舞伎の歴史に名を刻んでいます。

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