中村歌昇 (2代目)

二代目中村歌昇：歌舞伎役者から脚本家・映画監督へ

二代目中村歌昇（1925年-1973年）は、華麗なる歌舞伎の世界から、脚本家・映画監督へと転身した稀有な存在です。三代目中村時蔵を父に持ち、幼少期より歌舞伎の世界に身を置いていました。1936年、三代目中村種太郎の名で初舞台を踏むと、その後、持ち前の才能で着実にキャリアを重ねていきます。1951年には、梨苑会を結成し、元禄歌舞伎の復活上演など、革新的な試みにも挑戦しました。1953年には二代目中村歌昇を襲名し、歌舞伎役者として名を馳せました。しかし、幼少期から患っていた持病の悪化により、残念ながら志半ばで役者の道を断念せざるを得ませんでした。

歌舞伎役者としての活躍

若き日の歌昇は、類まれな才能と情熱で歌舞伎界に新風を吹き込みました。梨苑会での活動は、伝統を守りながらも新しい表現に挑戦する彼の姿勢を象徴しています。元禄歌舞伎の復活上演は、古典芸能への深い理解と、それを現代に蘇らせようとする強い意志の表れと言えるでしょう。彼のパフォーマンスは観客を魅了し、歌舞伎界に大きな影響を与えたことは間違いありません。

脚本家・映画監督としてのキャリア

歌舞伎役者の道を閉ざされた後、歌昇は本名の小川貴智雄として、新たな道を歩み始めます。当時まだ発展途上であったテレビドラマ制作の世界に飛び込み、脚本家、監督として活躍しました。フジテレビの『女は同じ物語』（1960年）や日本テレビの『竹千代と母』（1970年）といった作品は、彼の脚本家としての才能を証明する代表作と言えるでしょう。

映画監督としては、『白馬の剣士』（1964年）や『特別機動捜査隊』（NETテレビ、東映）などを手掛け、多様なジャンルでその才能を発揮しました。また、弟である中村錦之助の公演のために『殿さま弥次喜多』などの脚本を書き、家族を支え、歌舞伎界への貢献も続けました。1964年には、亡父である三代目時蔵の追善興行で『偲草姿錦絵』を構成し、故人の芸を後世に伝える役割も担いました。これらの活動は、彼が歌舞伎役者として培ってきた経験と才能が、新たな分野でも十分に活かせることを示しています。

名跡「四代目中村歌六」の追贈

1973年、48歳という若さでこの世を去った歌昇ですが、その功績は長く記憶されています。没後8年目の1981年、長男である五代目中村歌六（当時四代目中村米吉）が襲名した際に、歌昇には「四代目中村歌六」の名跡が追贈されました。これは、彼が歌舞伎界に残した足跡と、その才能を認め、称える証と言えるでしょう。

まとめ

二代目中村歌昇は、歌舞伎役者としての華やかな経歴だけでなく、脚本家・映画監督として新たな道を切り開き、成功を収めた稀有な人物です。歌舞伎という伝統芸能の世界で培われた表現力や、物語を構成する能力は、彼の後年の活動にも大きく貢献したと言えるでしょう。持病と闘いながらも、常に創作意欲を燃やし続け、数々の作品を生み出した彼の生涯は、後世への大きな影響を与え続けています。歌舞伎ファンのみならず、映画やドラマファンにとっても、注目に値する重要な人物です。

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