中村正也

中村 正也

中村 正也（なかむら まさや、1926年〈大正15年〉3月29日 - 2001年〈平成13年〉6月6日）は、20世紀後半の日本を代表する写真家の一人です。彼は特に商業写真の分野でその才能を発揮しましたが、同時に芸術性の高いヌード写真においても重要な作品を残しました。また、写真業界の発展にも貢献し、日本広告写真家協会の第3代会長という要職も歴任しました。

経歴

中村のキャリアは、まず工学系の教育から始まりました。川崎市立川崎工業学校の電気科で学んだ後、東京高等工芸学校（現在の千葉大学工学部に相当）の写真科に進み、写真技術と芸術の両面で専門教育を受けました。卒業後、彼は報道写真の世界に足を踏み入れ、1948年に読売新聞社の写真部に入社します。しかし、わずか半年で同社を離れ、その後は世界映画社、次いで1950年には映画スター社といった映画関連の企業に移籍しました。これらの経験は、彼の後の写真表現に大きな影響を与えたと考えられます。

1951年からはフリーランスの写真家として活動を開始。この独立が、彼の才能をさらに開花させる契機となりました。

主な活動と業績

フリー転身後、中村正也はコマーシャル写真の分野で広く認知されるようになります。彼の作品は、商品の魅力を引き出し、見る者に強い印象を与える力を持っていました。その一方で、芸術としてのヌード写真にも深く取り組み、独自の視点で人間の身体美を捉えた作品を発表し続けました。

特に有名な仕事の一つに、富士フイルムのカメラ「FUJICA ST 801」の広告写真があります。この広告のために、当時ノルウェーからの留学生であったゲルト・ティングラム（通称「ゲルトちゃん」）を被写体としたヌード写真を撮影し、大きな話題となりました。これは、商業広告とヌード写真という二つの彼の得意分野が交差した象徴的な事例と言えます。

また、写真業界団体における貢献も見逃せません。彼は日本広告写真家協会の会長を務め、業界の地位向上や若手写真家の育成に尽力しました。

受賞

中村正也は、その卓越した技術と芸術性により、国内外で高い評価を受けました。キャリアを通じて数々の賞を受賞しており、その一部を以下に挙げます。

1957年：第一回日本写真批評家協会新人賞
1961年：富士フイルムプロフェッシャナル・フォトコンテスト銅賞（「ヌード」で受賞）
1966年：ニューヨーク・アートディレクターズ・クラブ写真賞
1966年：日本光学賞
不明年：印刷時報社賞（'72年版三菱製紙カレンダー関連での受賞）
不明年：日本写真協会功労賞

これらの受賞歴は、彼の写真が写真批評家、広告業界、そして光学メーカーといった多角的な視点から認められていたことを示しています。

写真集

彼の写真作品は、複数の写真集としてもまとめられ、発表されています。

『野分け』
『エマ・ヌード・イン・アフリカ』

これらの写真集は、彼の作品世界を知る上で貴重な資料となっています。

中村正也は、コマーシャルとアートの両領域を行き来しながら、写真表現の可能性を追求し続けた写真家でした。その功績は、今日の日本の写真界にも影響を与えています。

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