中村泰信

中村 泰信（なかむら やすのぶ）について

中村泰信氏は、1968年2月2日生まれの日本の物理学者で、現在は東京大学先端科学技術研究センターの教授として、また理化学研究所の創発物性科学研究センター（CEMS）で超伝導量子エレクトロニクス研究チームのリーダーを務めています。彼の専門は量子情報科学で、特に超伝導量子回路やハイブリッド量子系に関する実験に注力しています。

来歴

中村氏は大阪府茨木市に生まれ、東京都西多摩郡の日の出町で育ちました。父親は日立製作所の研究者で、家庭の都合で1年間アメリカ生活を経験しています。東京都立立川高等学校を卒業後、東京大学工学部に進学し、1990年に工学士、1992年に修士（工学）、2011年に博士号を取得しました。

1999年にはNECの研究者として、Yuri Pashkin氏や蔡兆申氏と共に「固体電子デバイスにおける量子ビットの電気的コヒーレント制御」を実証しました。また、2001年にはラビ振動の初めての測定を成功させ、これが量子ビットの研究において重要なステップとなりました。この研究は1998年に行われた、クーパーペアボックス内のジョセフソン準位の遷移に関する実験に関連しています。

2000年には、「ナノスケール超伝導デバイスの量子状態制御」の研究により、日本物理学会の「若い科学者」として紹介されました。その後、2001年から2002年にかけてサバティカルを取得し、デルフト工科大学でHans Mooijグループに参加し、初の磁束量子ビットの作成に成功しました。これにより、2003年にはMITテクノロジー・レビューにおいて35歳未満のトップイノベーターに選出されました。

2016年には、科学技術振興機構（JST）から資金提供を受け、彼の研究プロジェクト「巨視的量子機械」が始まりました。このプロジェクトは、量子状態制御技術を向上させ、量子コンピューティングの発展を目指しています。その後、2019年には文部科学省の量子技術プロジェクト「QLEAP」の量子情報処理コンポーネントのチームリーダーとして活動しています。

最近の研究

中村氏の最近の研究には、単一のマイクロ波周波数の光子の効率的な検出や、超伝導量子コンピューティング環境下での準粒子抑制による量子ビットのコヒーレンス時間の改善などが含まれます。加えて、「決定論伝播マイクロ波光子を飛行量子ビットとして利用し、遠隔超伝導原子間の最大絡み合いを生成する方法」や、「強磁性球と超伝導量子ビットとの間の強いコヒーレント結合を用いたハイブリッド量子系の実現」など、領域の先端をいく挑戦が続いています。

彼の最近の主な業績には、超伝導量子ビットを使用してマグノン数状態を量子化する技術、定量的な非古典的光子数分布の生成、弾性表面波の揺らぎ測定などがあります。また、彼は無破壊量子検出実験を通じて超伝導回路の実用性を追求し続けています。

受賞歴

中村氏は、その業績に対して数々の賞を受賞しています。1999年には日本応用物理学会若手奨励賞を受賞し、同年に第1回日本マーチン・ウッド卿賞や仁科記念賞を受賞しました。また、2003年のMITテクノロジー・レビューのTR100に選ばれ、2004年にはアジレントテクノロジーズ欧州物理学賞を受賞しています。さらに、彼は多くの学術会議やセミナーで講演を行っており、その影響力は国内外に広がっています。

中村泰信氏は、現在も量子情報科学の研究における重要なリーダーの一人として、新たな知見と技術の発展に寄与し続けています。

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