中村藤吉

中村藤吉の生涯と剣道への献身

中村藤吉（なかむらとうきち）は1887年8月29日、福岡県浮羽郡田主丸町で生まれた日本の剣道家です。彼は剣道の範士7段の資格を持ち、戦前から海外で剣道の普及に尽力しました。父は旧久留米藩士族、中村半三郎であり、彼の剣道の道もこの環境からスタートしました。

藤吉は明治36年に家業の油小売業が破綻するという厳しい家庭環境に置かれ、その後両親は朝鮮の京城へ出稼ぎに出ます。この時、彼は士族仲間の吉瀬善五郎に引き取られ、津田一伝流を学び始めます。辛抱強い努力の結果、明治39年には津田一伝流の免許を皆伝し、両親の元に渡ることとなります。

大正4年、藤吉は京都武術専門学校の講習科に入学し、翌年に三段を取得しました。その後、彼は中野宗助と共に山形武徳会支部に専任として奉職し、剣道の普及に努めます。大正10年には再び京城に戻り、日本人学校や警察、憲兵に対して剣道の指導を開始し、地域の武道発展に寄与しました。

昭和3年には朝鮮の龍山に武徳殿を開設し、さらなる普及活動に従事。この頃、彼は資金調達のためにハワイや北米各地にも足を運び、剣道を教授しました。このようにして昭和5年には北米武徳会を結成し、彼の活動は国を超えて広がっていきました。

昭和12年には帰国し、「北米武徳会大義塾道場皇道学園」を立ち上げ、帰国子女のための訓練機関を創設します。しかし、昭和20年には敗戦の影響でこの道場は廃校となり、米軍に接収されてしまいます。長男・太郎が結婚したことをきっかけに、藤吉は新たに牛乳販売の事業を始めることになります。

昭和24年には牛小屋を道場として改装し、再び剣道の稽古を再開しました。その後、昭和27年にはGHQから道場が返還され、藤吉は再び剣道普及に向けて活動を続けていきましたが、昭和34年に稽古中に脳内出血で倒れ、以降の生活は再起不能となりました。彼は昭和46年7月31日にその生涯を閉じました。

中村藤吉は剣道を通じて多くの人々に影響を与え、剣道の国際的な普及に大きな貢献をしました。その遺志は、彼の功績を受け継いだ弟子たちに引き継がれています。

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