津田一伝流

津田一伝流（つだいちでんりゅう）

津田一伝流は、江戸時代後期に久留米藩で創設された剣道の流派である。この流派は、浅山一伝流を修得した久留米藩士・津田一左衛門正之によって体系化され、後に多くの達人を輩出した。津田一伝流は、剣道具の改良や試合稽古に関する新しい理念が取り入れられており、その名は広く知られるようになった。

創設者と背景

津田一伝流の創設は、津田一左衛門正之の努力によるものである。彼は浅山一伝流の流派から剣術を学び、さらにその奥義を深めるために京や江戸で修行を重ねた。特に、幕府の師範役であった男谷信友（精一郎）からも強く支持を受け、正之の剣論は評価されていた。藩主の有馬頼咸もその剣の技術を認め、津田に新たな流派を開かせることとなる。

津田一左衛門正之は、1821年に生まれ、父の津田伝教明から剣術を学んだ。彼は20歳の頃にはすでにその腕前を証明し、晩年には新たな剣道の体系を構築することに成功する。しかし、1871年に廃藩置県が実施された際、伝書を持つことができず、結果として彼は自らの流派を守るために自刃する運命を辿った。このことは津田一伝流の歴史の中でも特筆すべき出来事である。

系譜と流派

津田一伝流は、その系譜において浅山一伝流からの流れであることが明らかである。流祖である津田一左衛門正之は、浅山一伝流の17代目にあたり、その教えを後世に受け継いでいる。その後、津田教修が2代目となり、門下には多くの名剣士が名を連ねている。特に、達人たちには浅野庄太夫、浅野一摩、浅野彰太、津田岩雄などが含まれ、彼らはそれぞれ剣道界での地位を確立している。

津田一伝流印可極意巻

また、津田一伝流には「津田一伝流印可極意巻」と呼ばれる貴重な史料が残されている。この文書は、一左衛門正之が門人に対して免許を与えた際の内容を元にしており、一伝流の真髄を解明するための貴重な情報源となっている。この文書によれば、一伝流の基本的な構えは「中段の構え」であるとされ、心気力の一致を重視した剣術の哲学が記されている。

魅力的な逸話

津田一伝流にまつわる逸話も数多く存在する。正之が江戸で桃井春蔵と試合を行い勝利を収めたといった話や、彼自身の生徒たちの中には桂小五郎などがいることも知られている。また、津田教修の中隊長時代に日清戦争で栄冠を勝ち取った時に、自分のハンカチで日章旗を制作したエピソードは特に有名であり、これが後に軍歌としても歌われている。

津田一伝流は、独自の理念と技術を持ち続け、多くの剣士に受け継がれてきた。剣道界においてその影響力は未だに強く、流派の伝承は続いている。

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