中村邦子

中村邦子：日本の声楽界を彩ったソプラノ歌手

中村邦子（なかむら くにこ、1936年1月21日 - 1996年9月1日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の声楽家（ソプラノ）であり、音楽教育者としてもその名を刻みました。旧姓は大庭。

生涯と音楽活動

東京に生まれ、青山学院中等部・高等部を経て、1959年に東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業しました。畑中良輔、畑中更予、伊藤京子、リリー・コラーといった著名な指導者に師事し、その才能を開花させました。

1958年にデビューを飾り、二期会や東京室内歌劇場を中心に数多くのオペラに出演しました。昭和音楽大学オペラ情報センターには、58回もの出演記録が残されています（大庭邦子名義での3回を含む）。オペラのみならず、歌曲や宗教曲でもその才能を発揮し、特に日本歌曲においては、リサイタルや録音を通じてその魅力を広く伝えました。

ヴォルフガング・サヴァリッシュが来日した際には、シューマンの『ゲーテのファウストからの情景』（日本初演）でNHK交響楽団と共演するなど、コンサートソリストとしても活躍しました。1989年には、ユーロパリア89ジャパン（ベルギー）に招待され、国際的な舞台でもその実力を示しました。

教育者としては、武蔵野音楽大学で講師、助教授を歴任し、後進の育成に力を注ぎました。山口香緒里、佐伯洋子、志村紀美江、石原理恵、山﨑葉子、幸田直代、山村留美、町田由美子、金子道子、北嶋ちひろなど、多くの優れた声楽家を輩出しました。

受賞歴と業績

中村邦子の卓越した音楽性は、数々の賞によっても証明されています。1978年度の第6回ウィンナーワルド・オペラ賞（後のジロー・オペラ賞）を皮切りに、1981年度には第36回文化庁芸術祭（音楽部門）優秀賞を「中村邦子日本歌曲リサイタル」の成果に対し受賞しました。その後も1987年度に第15回ジロー・オペラ賞、1990年度には文化庁芸術祭賞（音楽部門）を「團伊玖磨の歌曲によるリサイタル」の成果に対して受賞しました。

家族と音楽の絆

夫も声楽家（テノール）の中村健であり、音楽一家を築きました。息子はサクソフォーン奏者の中村健佐です。

ディスコグラフィー

中村邦子は、多くの録音作品を遺しました。以下に主なディスコグラフィーを挙げます。

中村邦子－日本の抒情を歌う（1990年）
日本の名歌 ベストコレクション CD5枚組（2003年）
山田耕筰没後50年特別企画 山田耕筰 歌曲集（2015年）
瀧廉太郎作品集（1993年）
童謡誕生ストーリー第1話 －童謡誕生の瞬間－（2017年）
中田喜直歌曲集（1995年）
日本の声楽・コンポーザーシリーズ 7 瀧廉太郎（1997年）
にほんのうた 心のうた 日本の歌曲ベスト（1988年）
にほんのうた 心のうた 思い出の歌ベスト (2017年)
世界の子守歌（2005年）
山田耕筰 歌曲集（1994年）
ベスト・オブ・ベスト/日本の名歌（2006年）
Classis Seasons －Summer（2013年）
赤とんぼ 山田耕作作品集（2005年）
60代－70代－80代の方々へ（1996年）
歌いつがれる童謡・愛唱歌ベスト（1993年）
* [NEW BEST ONE]浜辺の歌◎日本のうた 名曲選 限定版（2004年）

これらのアルバムは、中村邦子の歌唱の魅力を今に伝える貴重な記録です。オムニバスCDの一部には、中村邦子歌唱の曲のみをMP3ダウンロードで入手できるものもあります。

死去

1996年9月1日、肺がんのため60歳で逝去しました。中村邦子の音楽への情熱と才能は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

もう一度検索