中村隆文

中村 隆文（なかむら たかふみ）

1974年生まれの日本の哲学者。現在、神奈川大学国際日本学部日本文化学科の教授を務める。

略歴

長崎県に生まれ、長崎県立西陵高校を卒業。その後、千葉大学文学部行動科学科で学び、同大学院文学研究科修士課程および社会文化科学研究科博士課程を修了し、博士（文学）の学位を取得した。

研究者としてのキャリアは、2009年に鹿児島工業高等専門学校一般教育科（文系）の講師としてスタート。2012年には同校で准教授に昇進した。2014年からは釧路公立大学経済学部の准教授として教壇に立ち、2019年には神奈川大学外国語学部の准教授に着任。そして2020年より、現在の神奈川大学国際日本学部教授となり、教育・研究活動を続けている。

研究活動

中村教授の研究は、18世紀を代表する哲学者デイヴィッド・ヒュームの思想を基盤としている。この哲学史的な視点を持ちつつ、現代における認識論や道徳心理学、そして正義論といった重要なテーマに取り組んできた。特に近年は、人間の持つ合理性の限界や、感情が私たちの意思決定や社会行動において果たす役割について、多角的な視点から深く考察している。その研究手法は学際的であり、行動経済学、リベラリズム研究、組織論といった分野の知見を積極的に取り入れているのが特徴である。

また、比較思想史やスコットランド文化に関する研究にも関心を示しており、その知的な探究の範囲は極めて幅広い。これらの多様なテーマへの取り組みは、哲学的な視点から現代社会の複雑な問題を理解しようとする姿勢の表れと言える。

主な著書

中村教授は、専門的な研究成果を一般読者にも分かりやすく解説する著書を多数刊行している。主な著作は以下の通りである。

• - 『不合理性の哲学――利己的なわれわれはなぜ協調できるのか――』（みすず書房、2015年）
• - 『カラスと亀と死刑囚――パラドックスからはじめる哲学――』（ナカニシヤ出版、2016年）
• - 『自信過剰な私たち――自分を知るための哲学――』（ナカニシヤ出版、2017年）
• - 『「正しさ」の理由――「なぜそうべきなのか？」を考えるための倫理学入門――』（ナカニシヤ出版、2018年）
• - 『リベラリズムの系譜学――法の支配と民主主義は「自由」に何をもたらすか――』（みすず書房、2019年）
• - 『世界がわかる比較思想史入門』（筑摩書房、2021年）
• - 『スコッチウイスキーの薫香をたどって――琥珀色の向こう側にみえるスコットランド――』（晃洋書房、2021年）
• - 『組織マネジメントの社会哲学――ビジネスにおける合理性を問い直す――』（ナカニシヤ出版、2022年）
• - 『物語　スコットランドの歴史』（中央公論新社、2022年）
• - 『なぜあの人と分かり合えないのか――分断を乗り越える公共哲学――』（講談社選書メチエ、2024年）

これらの著書は、哲学、倫理学、社会思想、さらには文化史や組織論といった幅広い分野に及び、中村教授の研究テーマの多様性を反映している。専門家だけでなく、多くの読者が哲学的な思考に触れるきっかけを提供している。

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