中村靖之介

中村靖之介（なかむら せいのすけ）は、1931年10月13日に北海道に生まれた日本の俳優・声優である。かつては声優事務所プロ・フィットに籍を置いていた。

彼の役者としての歩みは、1948年（昭和23年）に劇団前進座の一員となったことから始まった。その後、1958年（昭和33年）には初代「中村靖之介」として名を改め、成駒屋という屋号のもと、舞台を中心に活動を展開した。

テレビドラマにおいても精力的に活動し、特に時代劇には多くの出演歴がある。NHK大河ドラマには度々登場しており、『竜馬がゆく』（1968年）では桂右衛門を、『天と地と』（1969年）では織田信行を演じたほか、『花神』（1977年）や『黄金の日日』（1978年）にも出演している。また、長寿時代劇シリーズへの出演も多く、『三匹の侍』第6シリーズ第9話（1968年）では藤助役を務めた。NET（現テレビ朝日）で放送された『遠山の金さん捕物帳』（1970年 - 1973年）では与力の高崎靖之進役としてレギュラー出演を果たし、存在感を示した。『柳生十兵衛』（1970年）第5話では田添大和を、『大忠臣蔵』（1971年）にも名を連ねている。

時代劇『伝七捕物帳』には、日本テレビ版（1973年 - 1977年）とテレビ朝日版（1979年）の両シリーズに、いずれも板前役として出演しているが、役名はそれぞれ藤助、清助と異なっている。『必殺仕業人』（1976年）第12話では、旅回りの役者でありながら実は夜盗という二面性を持つ月之助を演じ、印象を残した。現代劇にも出演しており、『俺たちの朝』（1977年）第17話では株式会社セイトーの社長役を務めた。

人気シリーズ『暴れん坊将軍』（テレビ朝日）では、『暴れん坊将軍II』第103話（1985年）で若松屋与右衛門役を、『暴れん坊将軍V』第6話（1993年）では舞台指導の太兵衛役として登場した。また、2003年にはテレビ東京系の『信濃のコロンボ』シリーズにも出演し、長野県県会議員の遠山光次朗を演じた。時代劇の定番である『水戸黄門』にも出演している。

舞台役者としては、長年所属した前進座の公演を中心に、数多くの演目で重要な役柄を務めた。その出演作は多岐にわたる。

一本刀土俵入（掘下げ根吉）
お六と願哲（ずぶ六の三）
仮名手本忠臣蔵・六段目（女衡源六）
髪結い新三（魚屋新吉）
屈原（宋玉）
五重塔（大工鉄五郎）
魚屋宗五郎（三吉）
芝浜革財布（大工金公）
東海道四谷怪談（佐藤与茂七）
文七元結（藤助/甚八）

これらの演目において、様々な人物を演じ分け、観客を魅了した。

俳優業だけでなく、声優としても活動経験を持つ。ドラマCD『マスケティア・ルージュ第一巻〜深紅の銃士〜』ではモンフォール伯の声を担当したほか、パチスロ機『哲也〜雀聖と呼ばれた男〜』では房州の声を演じている。

長年の俳優活動において、その功績は高く評価され、複数の賞を受賞している。大阪市民文化賞は舞台『続水滸伝』での解宝役の演技に対して贈られた。また、神戸新聞社賞は歌舞伎十八番の一つである『象引』での象の足役での受賞である。これらの受賞は、彼の幅広い演技力と貢献を裏付けている。

総じて、中村靖之介は、劇団での基礎を築き、舞台、テレビドラマ、声優として多様な分野で活躍した実力派俳優であり、その長いキャリアの中で日本の演劇・映像界に貢献した人物である。

もう一度検索