中村鴈治郎 (4代目)

中村 鴈治郎（四代目）

四代目 中村 鴈治郎（なかむら がんじろう）は、昭和34年（1959年）2月6日生まれの、現代を代表する歌舞伎役者の一人です。屋号は成駒家、定紋はイ菱。上方歌舞伎の屋台骨を支える存在として知られ、名跡「中村鴈治郎」の当代を務めています。

歌舞伎界における名門中の名門である成駒家に生まれ育ちました。父は人間国宝として名高い四代目 坂田藤十郎、母は女優として宝塚歌劇団で活躍した後、政界に転じ参議院議長も務めた扇千景（林寛子）という、芸術と政治、両分野で一時代を築いた両親を持ちます。また、弟には同じく歌舞伎役者として活躍する三代目 中村扇雀がおり、妻は日本舞踊吾妻流の六代目家元、三世宗家である二代目 吾妻徳彌です。長男の中村壱太郎も歌舞伎の道に進んでおり、叔母には女優の中村玉緒がいます。このように、芸能一家の中心人物として、その血筋と環境は彼の役者人生に大きな影響を与えています。

学歴も特筆すべき点です。松濤幼稚園を経て慶應義塾に学び、慶應義塾大学法学部を卒業しています。これは、歌舞伎役者としては比較的珍しい、伝統的な芸の世界と現代的な学問の両方に触れた経歴と言えるでしょう。

彼の役者としての道のりは、昭和42年（1967年）11月、歌舞伎座での舞台『紅梅曾我』で「一萬丸」を演じ、中村智太郎として初舞台を踏んだことから始まります。その後、平成7年（1995年）には、実に48年間途絶えていた上方歌舞伎ゆかりの名跡である五代目 中村翫雀を襲名しました。これは、上方歌舞伎の伝統を現代に繋ぐ上で非常に重要な出来事でした。そして、平成27年（2015年）1月には、大阪松竹座において四代目 中村鴈治郎を襲名し、父である四代目坂田藤十郎（当時は三代目鴈治郎）から、上方歌舞伎の大名跡を受け継ぎました。

長年の舞台活動を通じて、その功績は高く評価されています。平成23年（2011年）には第32回松尾芸能賞の優秀賞を受賞。さらに、令和元年（2019年）5月には、紫綬褒章を受章するという栄誉に浴しました。これは、彼の芸に対する国家からの高い評価を示すものです。

歌舞伎の本舞台に加えて、映像作品への出演も積極的に行っています。初期には中村智太郎名義でテレビドラマ『大忠臣蔵』に出演。近年では、NHK連続テレビ小説『おちょやん』で存在感のある役柄を演じ、多くの視聴者に親しまれました。また、令和7年（2025年）公開予定の映画『国宝』にも出演が決まっており、活動の幅を広げています。

歌舞伎界における伝統の継承者として、昭和58年（1983年）には重要無形文化財（総合認定）に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となっています。これは、彼が単なる役者としてだけでなく、歌舞伎という日本の伝統文化を未来に伝える役割も担っていることの証です。

四代目 中村鴈治郎は、上方歌舞伎の芸と心を受け継ぎつつ、現代的な感性も兼ね備えた魅力的な役者です。名門の血筋、多様な経験、そして確かな実力によって、日本の伝統芸能を牽引する存在として、今後もさらなる活躍が期待されています。

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