中根龍太郎喜劇プロダクション

中根龍太郎喜劇プロダクションの概要

中根龍太郎喜劇プロダクション（なかねりゅうたろう きげきプロダクション）は、1928年6月に設立され、同年8月には解散した短命の映画会社です。本社は京都にあり、設立者であり主演俳優の中根龍太郎がプロデュースしたスタープロダクションです。主にサイレント映画を制作し、貸しスタジオである双ヶ丘撮影所を利用して3本の映画を撮影しました。また、このプロダクションは「中根コメディプロダクション」と呼ばれることもあり、通称「中根プロ」として知られています。

設立の背景

1928年4月、映画界には大きな変革が起こりました。マキノ・プロダクションの四国ブロック配給会社の山崎徳次郎は、映画館主たちを集結させ、全国150館の独立系映画館主で構成される「日本活動常設館館主連盟映画配給本社」を設立しました。これにより、独立プロダクションへの製作費の出資や作品の直接公開が目指されました。この動きに呼応して、映画界の著名な俳優たちがこぞって独立プロダクションを設立し、マキノを退社した中根もその一人でした。6月には中根龍太郎喜劇プロダクションが誕生しました。

活動内容とメンバー

中根プロの活動は活発で、当時の映画界には多くの才能が集まりました。名物照明マンと知られる「ムタやん」こと牟田口茂や、榎本健一（当時の名は榎本健）、結城三重吉（後の映画監督小崎政房）、千葉三郎（後の大乗寺八郎）などが参加し、それぞれのキャリアの新しい章を歩み始めました。最初の作品である『助太刀商売』には市川小文治も共演し、賑やかな顔ぶれが揃いました。

短命なプロダクション

しかし、この新しい試みは長続きしませんでした。設立からわずか2ヶ月後の7月末には「館主連盟」が瓦解し、経済的な困難がプロダクションにも影響を与えました。中根プロは結局、3本の映画を制作した後、8月には解散を余儀なくされました。同じ時期に独立した他のプロダクションが成功を収める中、千恵プロは年内に6本の映画を製作し、翌年に自前の撮影所を建設します。このことからも、中根プロの存続が難しかったことが伺えます。

解散後の活動

解散後、中根龍太郎は多くの仲間たちと共に新しい通り道を探し始めました。妻の女優泉春子の実家を頼り、彼は佐賀県唐津町に向かい、浪花節芝居の一座に参加します。この時期中根は松竹の下加茂撮影所に迎えられ、その後、有馬や小崎、千葉も同撮影所へと入社しました。また、榎本健一は自身のコメディの才能に気づき、1929年には帰郷し、成功を収めることとなります。

映画作品

中根龍太郎喜劇プロダクションは、以下の3本の映画を制作しました。
1. 『助太刀商売』 - 中根龍太郎が監督・脚本・主演を務めた作品で、市川小文治などが共演。
2. 『おんぼろ草紙』 - 監督は山崎藤江で、原作・脚本は北本黎吉、主演は中根龍太郎。
3. 『娘十八花婿指南』 - 再び中根が監督・脚本・主演を務めました。

このように、中根龍太郎喜劇プロダクションは、その短い活動期間ながらも、映画界に多大な影響を与える存在でした。

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