中江要介

中江要介：日中外交の重鎮、演劇青年から外交官へ

中江要介（1922年-2014年）は、日本の外交官として長年活躍し、特に日中関係において重要な役割を果たした人物です。駐中華人民共和国大使など要職を歴任し、従三位に叙せられました。

多彩な経歴と才能

大阪府出身の中江氏は、北野中学校、旧制第三高等学校を経て京都大学法学部を卒業後、外務省に入省しました。フランス語研修を積んだことから「フレンチ・スクール」出身者であり、条約局や国連外交の分野で長く活躍しました。しかし、その経歴は外交官としての側面だけに留まりません。若い頃は演劇に熱中し、「霞完」のペンネームでバレエの台本を執筆するなど、芸術的な才能も持ち合わせていました。彼の作品『いのち』『動と静』『蕩々たる一衣帯水』は、東京をはじめ、ベオグラード、カイロ、北京などで上演されました。

日中関係における貢献

中江氏の外交官としてのキャリアにおいて、最も注目すべき点は日中関係への貢献です。彼は、日中間の難しい問題、特に靖国神社問題に関して、独自の視点と行動力を発揮しました。当時の総書記、胡耀邦が靖国問題を静かに収束させようとする中、中江氏は、問題を放置すれば日本国内で誤った解釈が生まれる可能性を指摘し、中国側に問題視し続けるよう促しました。この行動は、日中関係の進展に貢献しただけでなく、彼の勇気と信念を示すものです。

多様な活動と著作

外交官としての活動以外にも、中江氏は三菱重工業株式会社社長室顧問、社団法人日中友好協会副会長、日本日中関係学会会長などを歴任し、多方面で活躍しました。また、『中国の行方―残された社会主義大国』『日中外交の証言』といった著作や、自伝的なエッセイ集『らしくない大使のお話』などを通して、自身の経験や外交秘話を後世に伝えました。これらの著作は、日中関係史研究において貴重な資料となっています。

晩年と功績

2014年、91歳で老衰のため逝去しました。没後、従三位に追叙されました。彼の功績は、単なる外交官としての役割を超え、日中関係の構築、文化交流の促進、そして歴史認識の多角的な理解へとつながるものでした。中江要介氏の生涯は、複雑な国際情勢の中で、信念と行動力をもって外交に臨んだ一人の外交官の姿を示しています。彼の経験と知見は、現代の日中関係、ひいては国際関係を考える上で、今もなお重要な示唆を与え続けています。

経歴詳細

1947年：京都大学法学部卒業、外務省入省
1952年：在フランス大使館勤務
1954年：条約局勤務
1958年：在ブラジル大使館勤務
1961年：国連代表部勤務
1964年：条約局法規課長
1967年：在ベトナム大使館公使
1969年：在フランス大使館公使（ユネスコ常駐代表）
1971年：アジア局外務参事官
1974年：アジア局次長
1975年：アジア局長
1978年：駐ユーゴスラビア特命全権大使
1982年：駐エジプト特命全権大使（南イエメン兼轄）
1984年：駐中華人民共和国特命全権大使
1987年：原子力委員会委員
2014年：死去 (91歳)

著書

『中国の行方―残された社会主義大国 明日の日中関係が世界の潮流を変える』(KKベストセラーズ)
『らしくない大使のお話』(読売新聞社)
『アジア人の戦後50年―共通認識を求めて』(亜細亜大学アジア研究所)
『日中外交の証言』(蒼天社出版)

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