中濱東一郎

中浜東一郎（なかはま とういちろう）

中浜東一郎は、安政4年7月7日（1857年8月26日）に、ジョン万次郎の長男として江戸の土佐藩邸で生まれました。1937年（昭和12年）4月11日に80歳で亡くなるまで、日本の医学界に大きく貢献した医師であり、医学者です。

生い立ちと医学への道

幼少期を江戸で過ごした後、明治5年（1872年）に横浜十全医院で医学を学び始めました。翌年には大学東校（現在の東京大学医学部）に進学し、明治14年（1881年）に卒業しました。

医学者としてのキャリア

卒業後、福島県医学校校長に任命されたのを皮切りに、岡山、金沢の医学校で教授兼病院長を歴任しました。明治18年（1885年）には内務省の命によりドイツへ留学し、ライプツィヒ大学で衛生学を学びました。ヨーロッパ各国の衛生学研究を視察し、明治22年（1889年）に帰国。帰国後は内務省衛生局に勤務し、東京衛生試験所所長に就任しました。明治24年（1891年）には医学博士の学位を取得しています。

多岐にわたる活動

中浜東一郎は、初代東京市医師会長を務めたほか、衛生学の研究者として、八丈島の風土病「バク」の研究に貢献しました。これは、マレー糸状虫症という病気で、当時、日本の医学界ではあまり知られていませんでしたが、中浜の研究によって広く認識されるようになりました。

北里柴三郎との論争

また、中浜は、当時、著名な医学者であった北里柴三郎に対し、ジフテリア治療血清の研究やコレラに関する見解について批判的な意見を述べ、論争となりました。これは、当時の医学界における研究に対する姿勢や、科学的根拠の重要性を議論する上で重要な出来事でした。

家族

中浜東一郎は、書家である畔柳完道の姉、よしと結婚し、多くの子女に恵まれました。長女の絲子は歌人として知られています。

死後

中浜東一郎は、1937年（昭和12年）4月11日に亡くなりました。墓所は雑司ヶ谷霊園にあります。

栄典

中浜東一郎は、その功績により、数々の勲章を授与されました。主なものとしては、オスマン帝国美治慈恵第四等勲章、勲五等瑞宝章、勲四等瑞宝章などがあります。

研究

特に注目すべきは、八丈小島におけるマレー糸状虫症の研究です。彼は、現地で「バク」と呼ばれていたこの病気の調査を行い、その実態を明らかにしました。その成果は、東京医事新誌に報告され、日本の医学界に大きな影響を与えました。

参考文献

中浜 明『中浜東一郎日記』冨山房、1994年。
中井義幸『鴎外留学始末』岩波書店、1999年。
* 北里柴三郎　宮島幹之助　高野六郎　『北里柴三郎読本　上』、書肆心水 2013年。


中浜東一郎は、日本の医学の発展に大きく貢献した人物であり、その功績は今日でも高く評価されています。

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