中筋山手東古墳群

中筋山手東古墳群：近畿地方における特異な古墳群

兵庫県宝塚市中筋山手にある中筋山手東古墳群は、天神川西岸に広がる丘陵地帯に築造された古墳群です。長尾山丘陵という広大な古墳群の一部を構成しており、その中でも西部に位置しています。当初は4基の古墳からなる群集墳でしたが、現在確認できるのは1号墳、2号墳、3号墳の3基のみです。他の古墳は宅地開発などの影響で消滅したと考えられています。

これらの古墳はいずれも円墳であり、共通して両袖式の横穴式石室が造られています。しかし、それぞれの古墳の石室は独自の特徴を持っています。

1号墳は直径約12メートルで、石室は玄室中央部がやや広がる独特の形状をしています。

2号墳は直径約11メートルで、開口部には列石が巡らされています。最も注目すべき点は、近畿地方では珍しい複室構造の石室を持っていることです。石室は仕切りによって前室と後室の2つに区切られており、発掘調査では8個の耳環や須恵器、土師器が出土しました。これらの遺物から、4人が埋葬されていたと推定されています。この2号墳は、1976年に宝塚市指定史跡に指定されています。

3号墳は直径約12メートルで、石室は当地域における両袖式石室の導入段階の特徴を示す貴重な遺構です。

発掘調査によって明らかになったこれらの古墳の築造時期は、古墳時代後期の6世紀後半と推定されています。長尾山丘陵には多くの古墳が存在しますが、中筋山手東古墳群は特異な石室構造を持つ点で、考古学的に非常に重要な古墳群と言えるでしょう。

遺跡の歴史と調査

中筋山手東古墳群に関する調査は、1975年に1号墳と3号墳の実測調査、2号墳の発掘調査が行われたことを皮切りに始まりました。その後の1976年には、2号墳が宝塚市指定史跡に指定されています。近年では、2018年に宅地造成工事に伴い、1号墳と3号墳の墳丘裾部で発掘調査が行われ、新たな知見が得られています。これらの調査によって、中筋山手東古墳群の埋葬施設の構造や、当時の生活文化を知る上で重要な情報が提供されました。

文化財としての価値

中筋山手東古墳群の中でも、特に2号墳は宝塚市指定史跡として、その歴史的価値が認められています。その珍しい複室構造の石室や出土遺物から、当時の社会構造や葬送儀礼を知る上で貴重な資料となっています。また、他の古墳も独自の特徴を持つ石室構造を持つことから、近畿地方における古墳研究において重要な役割を果たしています。今後の研究を通して、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。

まとめ

中筋山手東古墳群は、近畿地方における古墳研究において、その特異な石室構造と貴重な出土遺物から重要な位置を占める古墳群です。6世紀後半という時代背景と、それぞれの古墳の持つ特徴を合わせて考察することで、当時の社会構造や文化、信仰などをより深く理解できる可能性を秘めています。今後の調査や研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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