中舌狭めの広母音

中舌狭めの広母音(準開中舌母音)について



中舌狭めの広母音、または準開中舌母音とは、音声学における母音の分類の一つです。この音は、舌の位置が中舌であり、かつ広母音よりもやや狭い位置で発音される特徴を持ちます。国際音声記号(IPA)では、[ɐ]という記号で表されます。

発音の特徴



中舌狭めの広母音は、舌が口の中央付近に位置し、口の開き具合が広母音と中母音の中間程度になります。このため、発音される音は「ア」に近いものの、より曖昧で喉の奥から響くような音になります。この音は、多くの言語において、特定の母音の異音として現れることが多く、その音価は言語によって若干異なります。

様々な言語での例



この音は、世界中の様々な言語で見られます。以下にその具体的な例を挙げ、どのように発音されるかを見ていきましょう。

ギリシャ語


ギリシャ語では、例えば「αντίσταση (antístasi, “抵抗”)」という単語の中で[ɐ]の音が見られます。この単語は[ɐˈndistɐsi]と発音されますが、通常は/a/と転写されます。このように、ギリシャ語では、この音は/a/の異音として現れることがあります。

ドイツ語


ドイツ語の「der [deːɐ]」という単語にもこの音が使われています。ここでは、[ɐ]は、喉の奥から響くような曖昧な「ア」のような音として発音されます。

ブルガリア語


ブルガリア語では、アクセントのない「а」や「ъ」が[ɐ]の音で発音されることがあります。例えば、「анана́с (ananás, “パイナップル”)」は[ənɐˈnas]と発音されます。この場合、[ɐ]は弱く、曖昧な音として発音されます。

ポルトガル語


ポルトガル語では、口母音と鼻母音の両方でこの音が見られます。ポルトガル語では、/a/に対して、「閉じた a («a» fechado)」と呼ばれることがあり、特に口母音の場合、強勢部では鼻音の前に現れ、非強勢部ではすべて[ɐ]になります。

母音の例:
  • - 「câmara (“部屋”)」は[ˈkɐmɐɾɐ]と発音されます。
  • - 「manhã (“朝”)」は[mɐˈɲɐ̃]と発音されます。

母音の例:
  • - 「sangue (“血”)」は[ˈsɐ̃ɡɨ]と発音されます。
  • - 「mãe (“母”)」は[mɐ̃j̃]と発音されます。

これらの例からわかるように、ポルトガル語では、[ɐ]は多様な状況で現れる非常に重要な音です。特に鼻母音の場合、この音は鼻音化を伴って発音されることが特徴です。

まとめ



中舌狭めの広母音(準開中舌母音)[ɐ]は、様々な言語において重要な役割を果たしている音です。この音は、舌が口の中央に位置し、広母音と中母音の中間的な位置で発音されるため、特定の母音の異音として現れることが多く、その音価は言語によって微妙に異なります。ギリシャ語、ドイツ語、ブルガリア語ポルトガル語などの例を通じて、その多様な発音のされ方を見てきました。この音を理解することで、各言語の音声体系に対する理解がより深まるでしょう。

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