中華書局

中華書局は、中華圏において歴史と伝統を誇る、著名な出版社・書店です。その起源は1912年に遡り、陸費逵（伯鴻）によって上海で設立されました。当初は小学校や中学校向けの教科書出版が中心でしたが、事業は拡大し、古典籍、自然科学、社会科学、文学作品、そして多様な参考図書などを網羅するまでに成長しました。

中華書局の歩みは、中国の近代出版史と深く関わっています。特に、同業他社である上海の商務印書館とは、長年にわたる競争関係を築いてきました。その競争は、出版物の種類においても顕著に表れており、商務印書館が『辞源』を刊行すれば、中華書局は『辞海』を出版し、商務印書館が『四部叢刊』を発表すれば、中華書局は『四部備要』を刊行するなど、互いにしのぎを削る展開が続きました。こうした競争が、中国の出版文化の発展に大きく貢献したことは疑いありません。

中華人民共和国の成立後、中華書局は1954年に北京へ本社を移転しました。その後、1978年には、専門性の高い出版社として上海辞書出版社と上海古籍出版社が中華書局から独立。上海辞書出版社は辞書などの工具書、上海古籍出版社は古典籍の出版に特化し、それぞれ独自の道を歩み始めました。これらの出版社の独立は、中国の出版業界における分業化と専門化を促進する上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

中華書局の影響力は中国本土にとどまりません。台湾においても、中華書局は独自の拠点を展開し、中国語圏の出版文化に貢献しています。さらに、香港にも1927年に分局を開設し、1988年には三聯書店、商務印書館と共に聯合出版有限公司を設立。香港の出版業界にも深く関わっています。

このように、中華書局は中国の近代出版史において重要な役割を果たし、教科書から専門書、古典籍まで幅広い分野の出版物を世に送り出してきました。商務印書館との競争、そして分社化による専門出版社の設立など、その歴史は中国の出版業界の変遷を象徴するものです。現在も中華圏の出版界をリードする存在として、その活動を続けています。

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