中軌道

中軌道（MEO）

中軌道（Medium Earth Orbit, MEO）は、人工衛星が地球を周回するために設定される軌道の一つです。具体的には、高度およそ2,000キロメートル以下の「低軌道（LEO）」と、平均高度約36,000キロメートルで地球の自転と同じ周期を持つ「対地同期軌道（GSO）」との間に広がる宇宙空間に位置する軌道の総称を指します。インターメディエイト・サーキュラー・オービット（ICO）と呼ばれることもありますが、後述する企業名と同じ名称であるため混同しないよう注意が必要です。

軌道の特性

中軌道に投入された衛星は、地上から見ると常に空を移動しており、やがて地平線の下に沈みます。この軌道は、地球の公転周期のちょうど半分である約11時間58分で一周する「準同期軌道」を含んでいます。静止軌道のように特定の地上点の上空に留まることはないため、地球全体を継続的にカバーするためには、多数の衛星を連携させて運用する「衛星コンステレーション」と呼ばれるシステム構築が必要となります。低軌道に比べると、衛星が地球全体を一度に見渡せる範囲が広いため、同じ面積をカバーするために必要な衛星の数を減らせるという利点があります。

主な用途

中軌道は、その特性から特定の用途に特に適しています。

衛星測位システム

最も代表的な用途として、全地球測位システム（GPS）が挙げられます。米国のGPS衛星は、中軌道に分類される高度約20,200キロメートルの準同期軌道に配置されており、現在30機以上の衛星が運用されています。これらの衛星群からの信号を受信・解析することで、地上の位置を正確に特定することが可能となっています。

通信システム

通信衛星の軌道としても利用されます。地上からの距離が低軌道よりも長くなるため、地表の詳細な観測を行うリモートセンシングにはあまり適していません。しかし、広範囲をカバーできる利点を活かし、衛星電話や広帯域インターネット接続を提供する通信システムの構築が検討・実現されてきました。例えば、ロシアのモルニヤ衛星は、楕円軌道ながら高度500キロメートルから40,000キロメートルの範囲を飛行する軌道（準同期軌道を含む）を使用しており、約20機が運用されました。

関連する計画や事例

中軌道を利用した通信システムは、過去に複数の企業によって計画されました。その一つに、かつてICO社が進めていた計画があります。同社は高度約10,390キロメートルの軌道に10機の衛星を配置するシステムを構想していましたが、1999年に経営破綻し、その後の再建も成功しませんでした。

ちなみに、これと比較して、低軌道を利用した衛星コンステレーションとしては、イリジウム社（高度約780kmに66機）、テレデシック社（高度約1,300～1,400kmに288機を計画）、グローバルスター社（高度約1,400kmに48機）などがあります。これらの事例は、中軌道を利用したICO社の計画と比べて、より多数の衛星でシステムを構成する傾向が見られます。

中軌道は、低軌道と静止軌道のそれぞれの利点や制約の中間に位置することで、測位や通信といった特定のアプリケーションにおいて重要な役割を果たしています。今後も新たな技術開発や需要に応じて、その活用方法が進化していくと考えられます。

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