中部日本放送放送劇団

中部日本放送放送劇団

中部日本放送放送劇団は、「劇団CBC」の通称で知られる、かつて日本の放送界に存在した劇団です。その活動は1950年12月15日から1997年まで及び、日本初の民間放送事業者である中部日本放送（CBC）の設立と歩みを共にしました。CBCがラジオ放送を開始するにあたり、自局の番組制作を担う人材を育成・確保するために組織され、特に黎明期の放送において極めて重要な役割を果たしました。

劇団は1950年12月15日、中部日本放送の設立と同時に結成されました。これは、NHK以外の民間放送局によるラジオ放送開始を見据えた動きの一環でした。間もなく団員の募集が行われ、1950年後半から翌1951年にかけて第1期生が採用されました。この第1期生には、後に同局アナウンサーとなる栗谷俊男や、俳優として活動した井川則子、中村嘉奈子らが名を連ねています。また、NHK東京放送劇団出身の大村一平や、NHK長野放送劇団出身の柳有、今泉洋といった経験者も加わりました。一方で、浦野光のように第1期採用では不合格となったものの、後の1952年4月に第2期生として採用され、活躍した例もありました。

1951年9月1日、中部日本放送が日本初の民間放送としてラジオ放送を開始した日、劇団CBCの団員たちはその歴史的な瞬間に立ち会いました。彼らは放送劇『忘れ物』や『愛の贈り物』といった番組に出演するなど、開局初日の様々なプログラムに深く関わっています。その後も劇団は人材の育成を続け、1953年4月には第3期生を採用。この3期生の中には、後に劇団青俳に移籍した宮田桂や、俳優・演出家として活躍する舟木淳、詩人となった長谷川敬（芹江敬の名で在籍）、女優の松川佳澄らがいました。また、アナウンサーに転向した井藤敬子（後の松ヶ崎敬子）なども所属していました。

劇団の活動範囲は、CBCが1956年12月1日にテレビ放送を開始すると、ラジオからテレビへと広がっていきました。団員たちは、放送局の社員に準じた身分で、多岐にわたる番組に出演しました。1958年5月に採用された第4期生からは、後にナレーションや声優として広く知られる中江真司や、女優の此島愛子が入団しています。さらに1960年4月に採用された第5期生からは、『サザエさん』のマスオさん役などで国民的な声優となる増岡弘や、瀧雅也といった著名な声優を輩出しました。

劇団は、松井辰三郎、内田英一、山本安英、杉山誠といった指導者のもと、放送劇を中心に活動を展開しました。『たつのおとしご』（1954年）、『にしん場』（1954年）、『霧の音』（1955年）など、様々な作品に出演し、CBCの番組制作を支えました。

しかし、時代と共に放送局直属の劇団という形態は変化していきました。劇団CBCは、新たな団員の採用を終え、既存の団員が定年を迎えることで緩やかにその歴史を閉じました。そして1997年、最後まで劇団に在籍していた第4期生の鎌田吉三郎が定年退職したことにより、その活動を終え、自然消滅する形となりました。

中部日本放送放送劇団は、日本の民間放送が誕生し、発展していく黎明期において、番組制作を担う俳優や声優、アナウンサーといった多様な人材を育成・供給し続けた重要な存在でした。多くの分野で活躍するOB・OGを世に送り出した功績は、日本の放送史において特筆されるべきでしょう。当時、公共放送であるNHKを含め、多くの放送局が同様の専属劇団を編成しており、劇団CBCもその一翼を担いました。

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