中野島 (川崎市)

川崎市多摩区に属する中野島は、神奈川県の北東部、多摩川に沿って広がる地域です。現在の行政区分としては、中野島一丁目から六丁目が住居表示実施済み区域であり、一部に大字中野島が残っています。この地域の郵便番号は214-0012で、登戸郵便局が集配を担当しています。

地理的には、多摩川を境に東京都と接しており、川崎市内の主要な地域である登戸と稲田堤に挟まれた位置にあります。街の多くは穏やかな住宅地として利用されていますが、JR南武線の中野島駅を中心に商店や公共施設が集積しています。地域の特徴的な施設としては、私立のカリタス学園があり、小学校から高等学校までの一貫教育を提供しています。かつて、この地にはクレーン製造大手であるキトーの本社工場が置かれ、地域経済の一端を担っていましたが、1983年には山梨県へ移転しました。その広大な工場跡地は、その後、住友商事主導による大規模な再開発プロジェクトの舞台となりました。この再開発により、現代的な分譲マンションである「新多摩川ハイム」や、地域住民の生活を支える商業施設「サミット」が建設され、街の風景は大きく変化しました。この再開発の時期に合わせて、JR中野島駅の駅舎や駅前の交番も新しくなり、地域の中心部の機能が強化されました。また、この多摩川の自然豊かなエリアは、俳優の中本賢氏が長年取り組んでいる多摩川の自然を観察する活動「多摩川自然遊びガサガサ」が行われる場所としても知られています。広域的な文脈で中野島を語る場合、隣接する布田や生田一・二丁目のエリアを含む概念として用いられることもあります。

地域における土地の経済的な価値を示す指標として、住宅地の地価があります。2024年（令和6年）7月1日に公表された公示地価によれば、中野島五丁目7-18の地点では、1平方メートルあたり29万3000円という評価額がつけられています。

中野島の地名には、その歴史的な成り立ちが反映されています。その由来は、古くから多摩川の流れの中に自然にできた「島」のような地形、つまり中州（中島）であったことに遡ります。江戸時代には武蔵国多摩郡の一部として中島新田が開かれ、開拓が進められました。その後、行政区画の再編を経て、多摩郡中野島村、そして橘樹郡中野島村へと名称や所属を変え、さらに周辺の村と合併して稲田村、稲田町の大字中野島となりました。そして、1938年（昭和13年）10月1日、稲田町が川崎市に編入された際に、川崎市中野島の一部となりました。戦後、1972年（昭和47年）4月1日に川崎市が政令指定都市に移行し、多摩区が設置されたことにより、川崎市多摩区中野島として現在に至る行政区画が確立されました。さらに、1991年（平成3年）11月25日には住居表示制度が実施され、現在の街区である中野島一丁目から六丁目が整備されるとともに、隣接する登戸や和泉の一部地域も中野島として編入されました。

地域内には、多様な教育施設が立地しており、子どもたちの学びの場が充実しています。私立のカリタス学園は、小学校から中学校、高等学校までを備えた一貫教育校として、地域外からも生徒を集めています。公立の学校としては、川崎市立中野島中学校が地域の大部分を学区としており、小学校は川崎市立中野島小学校と川崎市立下布田小学校がそれぞれ指定されています。また、カリタス小学校も私立の小学校として存在します。加えて、カリタス幼稚園、中野島幼稚園、ウィズブック保育園、なかのしまのぞみ保育園、中野島のはら保育園、中野島フレンズ保育園、ハグミー・ナーサリーなど、多数の幼稚園や保育園が点在しており、就学前の幼児教育・保育の選択肢も豊富です。

地域住民の日常的な移動を支える主要な交通機関は鉄道です。JR東日本の南武線が地域内を走り、その中心に位置する中野島駅は、川崎駅方面や立川駅方面へのアクセスを提供しており、通勤・通学や地域間の移動に不可欠な存在です。

過去には、この地域に関連して、社会的な耳目を集める出来事も発生しています。2006年（平成18年）3月20日には、中野島五丁目にある高層マンションで、小学校三年生の男児が上層階から突き落とされ命を落とすという、非常に痛ましい事件が発生しました。また、2019年（令和元年）5月28日には、直接の所在地は隣接する登戸新町ではありますが、カリタス小学校のスクールバス乗り場付近で発生した通り魔事件は、地域住民だけでなく全国にも大きな衝撃を与えました。これらの事件は、地域の記憶に深く刻まれています。

もう一度検索