丸屋久四郎

丸屋久四郎：江戸の地本問屋

丸屋久四郎（まるや きゅうしろう）は、江戸時代後期に活躍した地本問屋です。生没年は不明ですが、弘化年間から慶応年間にかけて江戸で活動し、多くの浮世絵を出版しました。

経歴

丸屋久四郎は「丸久」と略されることもありました。当初、江戸赤坂新町3丁目で勝蔵店を構え、その後、慶応元年（1865年）6月には榑正町利兵衛の借地に店を移しています。嘉永6年（1853年）12月には、地本問屋の仲間入りを果たし、業界内での地位を確立しました。慶応元年6月には、養子の平次郎が家業を継ぎ、丸屋平次郎を名乗りました。丸屋久四郎の時代から、浮世絵の出版に力を入れていたことがわかります。

出版した浮世絵師と作品

丸屋久四郎は、当時の人気浮世絵師たちの作品を数多く出版しました。特に、歌川広重、三代歌川豊国、二代歌川国久、歌川国芳、二代歌川国貞といった巨匠たちの錦絵を手がけています。以下に代表的な作品を挙げます。

歌川広重
『江戸むらさき名所源氏』大判揃物：弘化年間に刊行された、江戸の名所を描いた揃物。
『東都名所年中行事』大判12枚揃：安政元年に刊行された、江戸の年中行事を描いた揃物。

三代歌川豊国・歌川広重
『双筆五十三次』大判55枚揃：安政年間に刊行された、東海道五十三次を二人の絵師が共同で描いた豪華な揃物。

三代歌川豊国・二代歌川国久
『江戸名所百人美女』大判合版の揃物：安政4年から安政5年にかけて刊行された、江戸の名所と美人を組み合わせた揃物。

歌川国芳
『赤沢山大相撲』大判3枚続：安政5年に刊行された、大相撲の様子を描いた迫力のある作品。

二代歌川国貞
『奥御殿泉水遊覧の図』大判3枚続：慶応元年に刊行された、大奥の庭園で遊ぶ人々を描いた作品。

これらの作品からもわかるように、丸屋久四郎は、当時の浮世絵界を代表する絵師たちの作品を積極的に出版し、浮世絵文化の発展に貢献しました。特に、歌川広重の風景画や、三代歌川豊国の役者絵、歌川国芳の武者絵など、多岐にわたるジャンルの作品を手がけたことは、丸屋久四郎の出版活動の幅広さを示しています。

まとめ

丸屋久四郎は、江戸時代後期の浮世絵界において、重要な役割を果たした地本問屋の一人です。多くの人気絵師たちの作品を出版することで、浮世絵文化の普及に貢献しました。その出版活動は、現代においても浮世絵研究において重要な資料となっています。

参考文献

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第3巻 大修館書店、1982年 ※142頁
* 吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年 ※160頁

もう一度検索