丸岡勇夫

丸岡勇夫（まるおか いさお、1970年7月 - ）は、日本のソフトウェア開発者であり、特にフリーのグラフィックソフト「Pixia」の作者として広くその名が知られています。群馬県出身です。

彼のキャリアは、大学在学中に市川ソフトラボラトリーで働き始めたことからスタートしました。大学院在籍中に同社に入社し、プロフェッショナルとしての歩みを進めます。市川ソフトラボラトリー時代には、MS-DOS向けのグラフィックソフトウェア「まるぱ」や、Windows 3.1向けの「デイジーアート」などの開発を主導しました。これらのソフトウェアは1990年代の日本のパソコンにおける代表的なグラフィックツールとして普及し、「デイジーアート」は1994年に日本ソフトウェア大賞を受賞するなど、その技術力が高く評価されました。

1994年には、「デイジーアート」の後継となるグラフィックソフト「ART/fw」を開発しました。当初は市川ソフトラボラトリーからの製品リリースを想定していたようですが、諸般の事情により自由ソフトウェアとして公開されることになります。この時期も彼は同社に在籍しており、「ART/fw」のドキュメントファイルには、彼が「デイジーアート」の作者である旨が記載されていました。「ART/fw」はオンラインソフトウェア流通サイトのVectorでも、株式会社市川ソフトラボラトリー名義で配布されていました。そして、1998年に「ART/fw」を発展させた形でリリースされたのが、彼の最も代表的な作品となるグラフィックソフト「Pixia」です。「Pixia」はその機能性と無償であることから、日本のユーザーだけでなく海外でも広く利用されるようになり、現在では11カ国語に対応するなど、国際的な普及を遂げています。2000年には「Pixia」または関連ソフトがフリーソフトウェア大賞に入賞しています。

現在、丸岡氏はマイアルバム株式会社の事業本部長を務めています。この会社は、日本で初めて個人向けのインターネット接続サービス「ベッコアメ・インターネット」を開始した尾崎憲一氏によって設立された企業です。

丸岡氏は、プログラマとして技術を追求するだけでなく、ソフトウェア開発に対する独自の哲学を持っています。例えば、2004年の「CAPA」誌のインタビューでは、デジタル技術の進化がパソコン上での写真と絵画の間にあった境界線をなくしつつあることについて語りました。また、同じく2004年の「デジタルカメラマガジン」や2008年のNHKのパソコン関連テキストに掲載されたインタビューでは、ソフトウェア開発において日本と欧米の文化的な背景や感性の違いが存在することを指摘し、日本人の国民性や文化に寄り合った、使いやすいソフトウェア開発の重要性を繰り返し主張しています。

個人的な側面としては、1999年に難病であるクローン病を発症しています。しかし、この困難な状況にあってもソフトウェア開発への情熱を失うことはなく、自身のウェブサイトで病状を記録・公開しながら、現在も闘病と並行して開発活動を精力的に続けています。

「Pixia」以外にも、丸岡氏は様々なグラフィック関連ソフトウェアの開発に携わっています。例えば、オリンパス社から発売された初心者向け写真編集ソフト「PhotoCreator」や、インプレス社の年賀状作成ムックに付属し好評を得た画像編集ソフト「HappyPaint」シリーズなどが挙げられます。また、専門誌への寄稿やインタビューを通じて、グラフィックソフトの基本的な使用法、フォトレタッチ技術、画像処理プログラムの基礎などを解説するなど、技術の普及啓発にも貢献しています。これらの活動や功績から、複数のメディアで「日本を代表するプログラマ」として紹介されており、日本のソフトウェア開発史、特にパーソナルコンピュータにおけるグラフィック分野の発展における彼の貢献は非常に大きいと言えるでしょう。彼の歩みは、技術革新への探求心と、ユーザーに寄り添う開発思想、そして逆境に立ち向かう強靭な精神力の証と言えます。

もう一度検索