丸岡明

丸岡明（まるおか あきら）は、1907年6月29日に東京市麹町で生まれた日本の小説家、能楽研究家です。父は落合直文門下の歌人で能楽書林を設立した丸岡桂、祖父は沖縄・高知の県知事を務めた丸岡莞爾という家系に育ちました。

暁星中学校から慶應義塾予科を経て、慶應義塾大学仏文科を卒業。大学在学中に水上滝太郎と知り合い、1930年に『三田文学』に「マダム・マルタンの涙」を発表し、作家としての活動を開始しました。その後、堀辰雄に師事し、1935年には「生きものの記録」を同じく『三田文学』に発表するなど、作家としての地位を確立します。

1966年には「静かな影絵」と「街の灯」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。また、『堀辰雄全集』の編纂委員を務めるなど、文学界への貢献も大きく評価されました。

丸岡明は、小説家としてだけでなく、能の解説や編集にも情熱を注ぎました。能楽書林の家系に生まれたこともあり、能に関する造詣が深く、『現代の能』、『日本の能』、『能楽鑑賞事典』など、能に関する著作も多数残しています。また、原民喜をモデルとした小説『贋きりすと』など、独自の視点を持つ作品も発表しています。

丸岡明の弟は、能楽書林社長となった丸岡大二。妻は、旧姓・山川美耶子で、ドイツ文学者・山川幸雄と歌人・山川柳子の娘です。また、夭折の女学生の遺稿集『薔薇は生きてる』で話題になった山川弥千枝は妻の妹にあたります。

丸岡明の作品は、小説、能の解説、編集など多岐にわたり、その才能は多方面で発揮されました。没後も、『丸岡明小説全集』や『北原武夫・丸岡明集』などが刊行され、その業績は今日まで高く評価されています。

主な著書
『生きものの記録』(1936年)
『柘榴の芽』(1939年)
『悲劇喜劇 新選純文学叢書』(1939年)
『或る生涯 短篇傑作集』(1940年)
『風に騒ぐ葦の如く』(1940年)
『心の旅』(1940年)
『妖精供養』(1947年)
『やくざな犬の物語』(1948年)
『コンスタンチア物語』(1949年)
『堀辰雄 人と作品』(1953年)
『現代の能』(1954年)
『幼年時代』(1954年)
『贋きりすと』(1956年)
『日本の能』(1957年)
『堀辰雄研究』(1958年)
『能談義』(1959年)
『青春の歌』(1961年)
『能楽鑑賞事典』(1961年)
『静かな影絵』(1965年)
『能・狂言物語』(1967年)
『ひともと公孫樹』(1967年)
『港の風景』(1968年)
『赤いベレー帽 随筆集』(1969年)
『丸岡明小説全集』(1969年)
『北原武夫・丸岡明集』(1975年)
『丸岡明 高知県昭和期小説名作集 第8巻』(1995年)

観世流謡本（一部）
1929年: 雨月、錦木、摂待、国栖、弓八幡、野宮、胡蝶、自然居士、仲光、絃上、安宅、籠太鼓、放下僧、東北、蝉丸、女郎花、水無月祓、鳥追舟、白髭、邯鄲、松虫、盛久、歌占、菊慈童、高野物狂、猩々、小塩、善知鳥、三輪、唐船、殺生石、土車、鉢木、道成寺、羽衣、竜虎、神歌、葵上、敦盛、蘆刈
1930年: 難波・兼平・千手・卒都婆小町・紅葉狩、神歌・高砂・田村・江口・班女・鵜飼
1939年: 山姥、代主、熊野、鵺、志賀、遊行柳、江島、九世戸、逆矛、桜川、船橋、蟻通、大原御幸、阿漕、経政、道明寺、巴、西王母、橋弁慶、小督、熊坂、項羽、野守、東岸居士、海士、鞍馬天狗、咸陽宮、定家、朝長、誓願寺、羅生門、柏崎、姨捨、皇帝、竜田、天鼓、老松、頼政、井筒、箙、隅田川、寝覚、夜討曽我、忠度、梅枝、竹生島、通盛、雲林院、三井寺、源氏供養、松山鏡
1940年: 合浦、身延、枕慈童、車僧、禅師曽我、猩々、三輪、蝉丸、松虫、胡蝶、放生川、六浦、一角仙人、須磨源氏、金札、大江山、岩船、知章、俊成忠度、生田敦盛、室君、安宅、住吉詣、谷行、半蔀、草子洗小町
1941年: 弱法師、七騎落
1944年: 桜川
1949年: 鶴龜・橋辨慶・土蜘蛛、竹生島・經政・吉野天人・菊慈童・紅葉狩、賀茂・田村・羽衣・小袖曽我・船辨慶
1951年: 巻絹・放下僧・野宮・弱法師・玄象

その他
『現代謡曲全集』 全50巻別巻20（筑摩書房） 1961 - 1966年
翻訳『家なき子』（エクトル・マロ、主婦之友社） 1951年

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