丸広百貨店川越店

丸広百貨店川越店は、埼玉県川越市の中心部に位置する百貨店です。賑やかな商店街「クレアモール」に面しており、丸広百貨店の事実上の本店として地域に根差しています。川越市内で唯一の百貨店であり、長年にわたり地域の商業をリードしてきました。

歴史と発展

開業と初期の成功

当店は1957年10月15日、川越まつりの日に開業しました。丸広百貨店の中では飯能店に次ぐ長い歴史を持ちます。当初は川越の中心地であった蔵造り地区の仲町に出店し、開業から地域一番店として大きな成功を収めました。創業者の大久保竹治氏は、この成功に満足せず、常に次の展開を模索していました。

移転と創業者の先見性

大久保氏は欧米の小売業を視察した経験から、将来的なマイカー時代の到来を予見していました。そこで、大規模な駐車場を備えた新店舗の必要性を痛感し、1964年に社内の強い反対を押し切って、当時としては川越の中心部からやや離れた現在の新富町への移転を決断します。3年の歳月をかけて用地を確保し、1000台分の駐車場を備えた新店舗を建設。この大胆な決断が功を奏し、移転後も当店は地域一番店としての地位を確固たるものにしました。

経営戦略と変遷

GMSとの競争と地域密着

高度経済成長期を経て、川越市には西友やニチイ、長崎屋などの総合スーパー（GMS）が進出してきました。当店はこれに対抗するため、数度にわたる増床や、百貨店らしい品揃えに加え生活用品までを扱う幅広い商品展開、さらには地域に根差した移動販売なども行いました。特に、創業者が予見したマイカー時代に対応した大規模駐車場は、多くの顧客を引きつけ、競争の中で優位性を保つ重要な要素となりました。これらの戦略が成功し、当店は大いに繁盛しました。

都市型百貨店への転換と改装

1990年代半ばになると、周辺に大型商業施設が増加したため、当店は差別化を図る必要に迫られました。1998年には「Open the department store」を宣言し、それまでの「何でも揃う」という強みから、ファッションやギフトに特化した都市型百貨店への転換を目指します。総額50億円規模の大規模改装を実施し、売場の再構築を行いました。改装時には一時的に「丸広川越本店」を名乗りましたが、長年地域に親しまれてきた「まるひろ川越店」の名称に戻されています。改装後の年商は目標には届かなかったものの、高い水準を維持しました。

「まるひろタウン化構想」と多角的な店舗展開

街の中心部形成とクレアモール

当店が新富町に移転したことは、川越市の商業エリアの重心を蔵造り地区から新富町へと移すきっかけとなりました。当店を中心に発展したクレアモールは、現在では埼玉県内でも有数の通行量を誇る繁華街となっています。

アネックス群と専門店の導入

丸広百貨店は、川越店と市内の別の店舗であるアトレマルヒロを結ぶクレアモール沿いに、複数の「アネックス」と呼ばれる別館を展開しています。これは「まるひろタウン化構想」と呼ばれる戦略の一環であり、単に百貨店としてだけでなく、エリア全体を一つの大きなショッピングセンター機能を持つ「街」として捉え、地域社会と共に経済や文化を発展させていくことを目指しています。かつて長崎屋川越店が入居していたアネックスA館をはじめ、これらの別館には、紀伊國屋書店、ソフマップ、山野楽器、Afternoon Teaなど、様々な専門店やテナントが入居しており、多様なニーズに応える複合的な商業エリアを形成しています。

館内の構成と特徴的な施設

本館・別館・アネックスのフロア構成

本館は地下1階から地上10階まであり、食品、化粧品、婦人服、紳士服、子供服、リビング用品、催事場、家電量販店（ノジマ）、バンケットルーム、ホールなど、百貨店らしい幅広い商品・サービスを展開しています。別館にはレストランフロアやタカノフルーツパーラーなどが入居しています。アネックス群は、クレアモール沿いや本館周辺に点在し、書籍、家電、楽器、ファッション、カフェ、ベーカリーなど、多様な専門店で構成されています。

屋上遊園地の歴史と現在

かつて本館屋上には、1968年に開園した屋上遊園地「わんぱくランド」がありました。観覧車やモノレールなどの遊具を備え、多くの人々に親しまれました。特に小型観覧車「わんぱくホイール」は、日本で2番目に小さい観覧車として知られ、テレビ番組や有名アーティスト（Gackt）のCMロケ地としても話題になりましたが、建物の耐震工事のため2019年9月に惜しまれつつ閉園しました。現在、屋上の一部は人工芝の多目的広場「エンジョイ広場」としてリニューアルされています。

民部稲荷神社

本館屋上には「民部稲荷神社」が鎮座しています。この神社は、もとは別の場所にありましたが、丸広百貨店開業に伴い屋上に遷座しました。相撲好きのキツネ「民部」を祀るとされ、足腰の健康にご利益があると言われています。「まんが日本昔ばなし」でもその由緒が紹介されたことがあります。

アクセス

当店へのアクセスは、西武新宿線本川越駅から徒歩約5分、東武東上線・JR川越線川越駅東口からは、クレアモールをまっすぐに進み徒歩約10分です。車でご来店の際は、北側の旧川越街道から入り、お買い物金額に応じた無料駐車場をご利用いただけます。

もう一度検索