丸田祐三

丸田祐三九段：戦中戦後の将棋界を支えた名棋士の生涯

丸田祐三九段(1919年-2015年)は、日本の将棋界に多大な貢献を果たした棋士です。長野県長野市出身で、77歳という高齢まで現役棋士として活躍し、数々の記録を残しました。その生涯は、戦時中の苦難や、将棋界での華々しい成功、そして日本将棋連盟への貢献と、ドラマチックな展開に満ち溢れています。

商業学校中退から将棋の道へ

丸田は商業学校を中退後、運動具店の店員として働いていました。しかし、東京・渋谷の将棋道場において、平野信助七段に見出され、その才能を開花させます。奨励会入会時には、平野七段の計らいで6級から入会、その後順調に昇段していきました。しかし、1940年には陸軍に入営、奨励会員のまま軍隊生活を送ることとなります。

戦禍をくぐり抜け、将棋界へ復帰

太平洋戦争終戦後、丸田は故郷に戻りますが、家は空襲で焼失し、両親と兄は戦死していました。生き残ったのは姉一人だけで、彼は直ちに生計を立てる必要に迫られました。絶望の淵にいた丸田は、渡辺東一八段を訪ね、将棋を諦め他の仕事に就くことを告げます。しかし、渡辺八段は既に丸田を四段に推薦しており、将棋界に残るよう強く説得しました。

驚異的な昇段劇と華々しい活躍

四段となった丸田は、順位戦でC級からスタートしながらも、12勝2敗という好成績でB級に昇級します。さらに、将棋大成会の規定変更により、四段から七段へと一気に昇段。この異例の昇段劇は「丸田の三段跳び」として語り継がれています。その後も勢いは衰えず、わずか2年で八段に昇段、最短昇段記録を達成しました。名人戦への挑戦や数々の棋戦優勝など、第一線で活躍し続けました。NHK杯テレビ将棋トーナメントでは3回の優勝を飾るなど、数々の輝かしい実績を残しています。

理事・会長として将棋界の発展に貢献

1949年には日本将棋連盟の理事に就任、その後会長も務め、将棋連盟の運営に長年携わりました。その間、王座戦の創設にも尽力するなど、将棋界の発展に大きく貢献しました。彼は酒を飲まず宴席を好まなかったため、口の堅さで知られ、棋士たちの信頼を得ていました。また、棋士の給料算定システムを作り上げるなど、組織運営にも手腕を発揮しました。

棋風と人物像

丸田の棋風は「小太刀の名手」と評されるように、歩の使い方が巧みでした。独自の戦法「丸田流ひねり飛車」は河口俊彦氏から「不朽の定跡」と称賛されています。また、加藤一二三九段は、丸田の棋理の深さと作戦巧者ぶりを高く評価し、早投げの棋風であったと述べています。先崎学八段は、中盤における柔軟な発想力を丸田の特徴として挙げています。

丸田は記憶力も抜群で、A級順位戦の棋譜を全て暗記していたという逸話も残されています。大山康晴十五世名人とは親交が深く、その対戦成績は25勝45敗1持将棋でした。しかし、対大山戦の勝率は二上達也九段や内藤國雄九段を上回っています。

晩年と没後

1996年、77歳で現役を引退しました。これは当時の最年長現役記録でした。2015年、95歳で多臓器不全による肺炎のため亡くなりました。彼の死によって、大正生まれの棋士は全て鬼籍に入ることとなりました。

丸田祐三九段の生涯は、戦禍を乗り越え、持ち前の才能と努力で将棋界の頂点に上り詰めた、稀有な棋士の人生でした。その功績は、将棋界の発展に多大な影響を与え、これからも長く語り継がれていくことでしょう。彼の足跡は、後世の棋士たちに大きな刺激を与え続けるでしょう。

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