丹治峯均筆記

丹治峯均筆記について

『丹治峯均筆記』は、立花峯均によって書かれた宮本武蔵の伝記です。この書は、熊本に存在する宮本武蔵遺蹟顕彰会が編纂した『宮本武蔵』（通称「顕彰会本」）において紹介されたことから、広く知られるようになりました。しかし、実際には『丹治峯均筆記』という名称の本や写本は見つかっていません。この名称は、立花峯均が武蔵の伝記に「兵法五代之門人 丹治峯均入道廓巖翁」と署名したことに由来しています。そのため、「丹治峯均が筆記した文書」という意味を持ちます。このような名称の由来については不明な点が多く、「顕彰会本」に記載されている資料には書名が書かれていなかったことが影響していると考えられています。

近年、研究者による探索の結果、峯均が著したエピソードを収めた写本が2件確認されました。1つは福岡市総合図書館所蔵の『武州伝来記』、もう1つは島田美術館に所蔵される『兵法大祖武州玄信公伝来』です。これらの写本は、二天一流の開祖である新免武蔵の伝記を中心に内容が構成されています。さらに、2代目の寺尾孫之允から4代目の吉田太郎右衛門までの略伝も記載されており、丹治峯均自身の自伝や宮本家の小倉碑文も付録として含まれています。ここで注目すべきは、これらの内容が一致している点です。

そのため、熊本の「顕彰会本」がどの写本を参考にしたのかが現在の研究の焦点となっています。前述した2本の写本のいずれかを参照したのであれば、それに基づいた書名を使用したほうが自然です。一方で、別の第3の写本に基づく可能性も指摘されていますが、現在のところ具体的な情報は得られておらず、意見が分かれています。

島田美術館所蔵の写本の調査結果は特に興味深いものです。この写本の表紙は近現代に保護のために付けられたもので、本来の表紙は失われていることが判明しています。また、宝暦6年（1756年）に『武州伝来記』を写したことが明確に記載されており、このことから書名が『兵法大祖武州玄信公伝来』であるという主張には確固たる証拠が求められます。したがって、現物を詳細に調査し科学的に判断する必要があります。

このように、『丹治峯均筆記』は宮本武蔵の伝記としての重要性を持ちながら、その実体に関してはまだ多くの謎が残されています。今後の研究によって、さらなる真実が明らかになることを期待しています。

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