主八界

主八界：菊池たけし作品を繋ぐ多元宇宙

主八界（しゅはっかい）とは、テーブルトークRPG（TRPG）デザイナーである菊池たけし氏の作品世界を包括する宇宙観のことで、「きくたけワールド」とも呼ばれます。『セブン＝フォートレス』や『ナイトウィザード』など、氏が手掛けた各作品の世界は、一つの壮大な多元宇宙に存在する並行世界同士であるとされています。

主八界の構成

これらの並行世界は、主に以下の8つ（または12）の世界で構成され、これらをまとめて「主八界」と呼びます。

1. 第一世界「ラース＝フェリア」: 『セブン＝フォートレス』の舞台
2. 第二世界「エルスゴーラ」
3. 第三世界「エル＝ネイシア」: 『超女王様伝説セント★プリンセス』の舞台
4. 第四世界「エルクラム」
5. 第五世界「エルフレア」: 『エイスエンジェル』の舞台
6. 第六世界「エルキュリア」
7. 第七世界「ラスティアーン」
8. 第八世界「ファー・ジ・アース」: 『ナイトウィザード』の舞台

主八界に属する世界観を持つ作品同士は、リプレイやゲームシナリオの中でクロスオーバーすることが多く、これらの繋がりを理解することで、菊池作品をより深く堪能できます。

ただし、全ての菊池作品がこの多元宇宙観で繋がっているわけではありません。例えば、『アリアンロッドRPG』の世界は他の菊池作品とのクロスオーバー設定はありません。また、『アルシャード』のリプレイには主八界に属する世界の人物が登場するものがありますが、『アルシャード』など井上純一氏の作品の多元宇宙観であるユグドラシル宇宙との繋がりは公式には明言されていません。

世界珠（せかいじゅ）

主八界だけでなく、それを取り巻く上位世界である「天界」や下位世界である「冥界」なども含めた多元宇宙構造は、球状をなしており、「世界珠」とも呼ばれます。これは、三次元的な意味での球状ではなく、各世界の位置関係を並べると球状のイメージで表されるという意味です。

多元宇宙観を管理する神々や、敵対者である古代神/魔王などについては、Wikipediaの項目「主八界の神々」を参照してください。

多元宇宙の歴史

主八界を内包する多元宇宙には、詳細な世界創造の神話が設定されています。以下にその概要を説明します。

宇宙の創造

宇宙の源初には、「空間の素」である世界珠しか存在しなかったとされています。そこは混沌とした世界でした。ある時、超至高神という存在が傷ついた体を休めるために世界珠を訪れました。超至高神は、自らが安息の眠りにつける場所を作るため、世界珠にある混沌を封じ込め、秩序だった宇宙の構造を作り出しました。そうして「天界」「神界」「闇界」「冥界」「精霊界」、そして「人間界」が創造されました。人間界と精霊界にはさらに無数の小世界が作られ、各世界に人間や精霊が生み出されました。また、宇宙創造の際、超至高神は作業の助けとして108柱の神々を生み出しました。これが後に古代神と呼ばれる存在です。

古代神戦争

宇宙が完成してしばらくして、108柱の古代神たちは宇宙の支配権をめぐり、超至高神に対して反乱を起こしました。宇宙創造の実作業に従事したのは自分たちであり、宇宙を支配するのは超至高神ではなく自分たちであると主張したのです。超至高神と古代神の戦いは熾烈を極め、超至高神は戦いに勝利するため「軍」を作ることにしました。まず、自らの存在の一部を引き裂いて白神と黒神という二柱の神格を生み出し、最高司令官としました。白神と黒神はさらに八大神と呼ばれる八柱の神々を生み出し、古代神との戦争の将軍役としました。八大神は主八界に住む人間たちと精霊界の精霊たちを率いて、古代神の勢力と戦いました。この時、有能な人間や精霊は八大神により亜神としての能力を与えられ、戦場で活躍しました。これらの亜神が後に守護者と呼ばれる存在になります。一方、古代神たちもまた「軍」を作り出し、自らを信奉する人間や精霊たちに「混沌の力」を与え、精霊獣や冥魔と呼ばれる眷属を作り出しました。

終戦

白神と黒神が率いる軍と、古代神たちが率いる軍の戦争は数万年続きました。戦いは膠着し、宇宙そのものが荒廃していきました。全次元の破滅を恐れた超至高神は、再び自らの存在の一部を引き裂いて聖竜騎士と呼ばれる八柱の神格を生み出しました。聖竜騎士は白神や黒神と違い戦闘能力に特化した神格で、その一撃は不死である神々さえも砕いたと言われます。聖竜騎士の投入により戦いは超至高神側の勝利として終結しました。開戦から10万年後のことです。全ての古代神は眷属とともに様々な世界に封印されました。

しかし、白神、黒神、聖竜騎士の創造に際して自らの存在を引き裂いた超至高神は、激しい傷を受けていました。傷を癒すため、人間界に「央界」という小世界を作り出し、そこで眠りにつきました。眠りの場所を人間界にしたのは、人々の愛や信仰心が超至高神の傷を癒すのに有効だからです。

主八界の誕生

その後、宇宙は白黒二神と八大神によって復興しました。宇宙の各次元は八大神によって管理されることになり、天界は「天神」、闇界は「冥神」が管理するようになりました。人間界は、一柱の神々が統括するのではなく、小世界ごとに一柱の神々が管理することになりました。古代神戦争での世界崩壊の影響は大きく、無数にあったと言われる人間界の小世界は8つ（一説には12）しか残らなかったのです。これが「主八界」です。

八大神たちは人間界への直接的な介入を避け、天界や闇界などより広大な世界の管理に集中しました。そのため、人間界の実質的な管理は八大神の部下にあたる守護者や守護天使によって行われています。

第二次古代神戦争

主八界のそれぞれの世界は別々に歴史を歩み、近年まで交流はほとんどありませんでした。しかし、第一世界ラース＝フェリアで起こった「ラース戦役」をきっかけに、複数の世界の勢力が互いに争うようになりました。これは冥界に封じられた魔王「神王エルオース」が裏で糸を引いていたもので、その最終目的はエルオースの人間界への復活でした。野望は阻止されたものの、冥界と人間界の間の次元的な境界が弱まり、主八界の全ての世界に対して冥魔の軍勢が攻め寄せるという事態が発生しました。

現在、人間界の住人たちは世界の壁を越えて協力し、冥魔の軍勢と戦っています。この多元宇宙を巻き込む戦いは、かつての古代神戦争になぞらえて「第二次古代神戦争」と呼ばれています。

主八界の概略

主八界の各世界の概要は以下の通りです（最新の作品の情報を元にしています）。

第一世界ラース＝フェリア: 恒常的に世界の危機に見舞われている剣と魔法のファンタジー世界。
第二世界エルスゴーラ: 鋼騎（魔法の力で動く巨大ロボット兵器）を駆る戦士たちの世界。
第三世界エル＝ネイシア: 超女王と聖姫が統治する世界。住人は亜神を狂信的に信奉している。
第四世界エルクラム: 空を飛ぶ船と精霊術師の世界。天空に浮かぶ島々が舞台。
第五世界エルフレア: 魔法と科学が融合したメカファンタジー世界。人造天使が戦力の中核。
第六世界エルキュリア: 世界全体が海に覆われた海洋世界。軍艦による戦争が頻発。
第七世界ラスティアーン: 白と黒の勢力が争う世界。聖竜騎士の力が封印されている。
第八世界ファー・ジ・アース: 我々が住む現代地球に酷似した世界。侵魔や冥魔の侵略を受けている。

その他の世界

神界: 白神と黒神が住まう世界。八大神以上の存在は特別な理由がない限り入れない。
天界: 八大神が住まう世界。天界と神界を合わせて天上界と呼ぶ。
幻夢界: 精霊界を囲むように存在する世界。幻夢神によって管理されている。
精霊界: 天上界と闇界/冥界の狭間に存在する広大な世界。地の精霊界、水の精霊界、火の精霊界、風の精霊界の4つに分けられる。
人間界: 精霊界の中に浮島のように存在する小世界群。人間や一部の精霊たちが住む。
央界: 世界珠の中心部に位置する世界。超至高神が眠りについている。
裏界: 第八世界の裏側に存在する特殊な世界。古代神が封じられている。
闇界: 古代神戦争に敗れた古代神とその眷属（冥魔）たちを封じる牢獄。
冥界: 宇宙の原初の姿である「世界珠」に存在した負の存在を封じるために作られた世界。
外世界: 世界珠の外側の世界。超至高神や魔王エンディヴィエが来訪した。

主八界