主要官員問責制

主要官員問責制とは

主要官員問責制は、2002年7月1日に董建華行政長官の2期目のスタートと同時に導入された香港政府の組織改革です。これは、それまでの公務員が中心であった政府の要職を政治任命のポストに変更し、行政長官が直接責任を負う体制へと移行させるものでした。この制度は高官問責制、または単に問責制とも呼ばれています。

この改革では、司長と局長の職が公務員から政治任命へと変更され、全員が行政会議のメンバーとなりました。同時に、局の再編も行われ、16局が11局に統廃合されました。

導入の背景

それまでの香港政府では、行政長官と一部の司長を除き、政府の要職はほぼ全て公務員が占めていました。行政長官の下には司長がおり、政務司司長が全ての局長を指導する立場にありました。財政司司長も経済関係の局長を指導していました。

この体制下では、政務司司長の権限が比較的強く、香港政府の政策決定は公務員主導のボトムアップ型でした。しかし、董建華行政長官は自身の権限強化を図るとともに、当時の政務司司長であった陳方安生との対立が多かったため、司長の権限を削減する目的で問責制を導入しました。

制度導入後の変化

問責制の導入により、公務員の最高位は政務司司長から局長の下に設けられた常任秘書長となりました。公務員の給与体系上、従来の局長と新しい常任秘書長は同格とされます。そのため、問責制導入後の局長は、従来の局長よりも給与が高く設定されました。

また、この制度導入に合わせ、司長や行政長官の給与も増額されました。これは、新しい局長や司長に企業や財界から人材を登用するためであり、政府側は実際の企業の幹部の所得水準と比較すればまだ安いと主張しました。

批判と問題点

問責制に対しては、民主派などから批判が寄せられました。その主な理由は、高官の任命に議会である立法会の承認が必要ないため、行政長官のお気に入りの人物ばかりが任命され、香港政府の中立性が失われる恐れがあるという点でした。

さらに、そのような高官が問題を起こしても、行政長官の指示に基づいた行為であれば責任を問われる可能性が低いとされ、制度の実効性が疑問視されました。

実際に、董建華行政長官は、レクサスゲートを引き起こした梁錦松財政司司長や、香港基本法23条に基づく国家安全条例に関する立法会答弁の際に暴言を吐いた葉劉淑儀保安局長などを庇い、解任を拒みました。この出来事は、董建華行政長官に対する辞任要求が高まる要因となり、2003年7月1日の50万人デモにつながりました。このデモの後、ようやく梁錦松と葉劉淑儀は辞任しました。

現在の状況

形式的には、現在も問責制は存続しています。しかし、2005年7月に就任した曽蔭権行政長官は、行政会議の非官職メンバーを追加し、3司長11局長は同会議において少数派となりました。また、2007年7月より局が12局となる予定です。

まとめ

主要官員問責制は、香港政府の組織改革として導入されましたが、その過程で様々な問題点が浮き彫りになりました。制度の目的や運用方法、そして高官の責任の所在など、多くの課題が残されたまま、制度は現在も形を変えながら存続しています。この制度は、香港の政治体制における重要な転換点であり、その影響は今もなお、香港社会に影響を与え続けていると言えるでしょう。

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