乃可勢

乃可勢（のかせ）について

乃可勢（のかせまたはのかぜ）は、日本の歴史において特に重要な文化財とされる一節切の笛です。この笛は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、松平忠輝といった日本の戦国時代の著名な武将たちの手を経てきました。その後、徳川家康が最後の時を迎える際、茶阿局を通じて彼の六男である松平忠輝に託されたとされています。

現在、この乃可勢は、長野県諏訪市の貞松院に所蔵されており、同市の有形文化財に指定されています。貞松院は、忠輝が58年間過ごした地であり、彼にとって深い意味を持つ場所でもあります。乃可勢の現品には、金泥で織田家の紋章である織田瓜や、変体仮名による銘が施されています。また、その収納箱には松平家の葵紋とともに「織田信長自愛 のかせ 御笛」という文言が刻まれています。

乃可勢は、江戸時代中期の忠輝の100回忌（1782年）や150回忌（1832年）を記念して、模造品が10本作成されました。その中の一本である「秋声（しゅうせい）」も貞松院に伝わり、今でも法要などの実用に供されています。昭和に入るまでの間に、模造品は関係者に配布されたと考えられていますが、残る9本の行方は現在不明となっています。

乃可勢は、ただ単に茶道具の一つにとどまらず、その歴史的背景により日本文化や茶道の重要な一端を担っています。この笛は、日本の文化遺産の象徴でもあり、今後もその価値と意義を見守っていく必要があります。茶道を通じて古き良き日本の精神を感じることのできる貴重なアイテムであるこの笛は、長い歴史に思いを馳せる機会を与えてくれる存在です。乃可勢を通じて、戦国時代の武将たちの生き方や情熱を感じ、また、彼らが生きた時代の文化を学ぶことができる一助となるでしょう。

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