久保為義

久保為義の生涯と業績

久保為義（くぼ ためよし）は、日本の映画界における先駆者と言える存在でした。明治39年、1906年11月15日に京都市下京区で生まれた彼は、映画監督として数多くの作品を手掛け、特に昭和初期の日本映画において重要な役割を果たしました。当初、久保は宝塚キネマ時代に「久保文憲」という名義で知られていました。

幼少期から初期の経歴

久保は1925年に京都市立第一商業学校を卒業し、第一銀行へ就職しますが、映画への情熱を捨てきれず、1926年に友人で舞台俳優のマキノ正博のもとを訪ねました。そこで彼は牧野省三が設立した「マキノ・プロダクション」に入社し、助監督として映画界に足を踏み入れました。この年、久保は正博のデビュー作の脚本を書き、それが彼の脚本家デビューとなりました。

彼の監督デビュー作は、1927年に公開された『この母を見よ』で、主演には後に映画監督となる滝沢英輔が起用されました。監督としての才能を発揮し、正博との共同作業を通じて才能を磨いていきました。

映画界での活躍

長い間、久保はマキノプロダクションで活動を続け、数々の映画を監督しますが、1930年に募集による徴兵に応じて陸軍に従軍、約2年半の間、映画の世界を離れることになります。復帰後には、さらなる作品を生み出し、1935年には「マキノトーキー製作所」を設立し、政博とともに数本のトーキー映画を監督しました。この時期の作品は、トーキー映画という新たな試みに挑戦するもので、時代背景を反映したものとなりました。

1937年以降、J.O.スタヂオに移籍した彼は、古川緑波原作の『歌う弥次喜多 京大阪の巻』や『裸武士道』などの作品を手掛け、映画界での立ち位置を確立していきました。しかし、彼の映画人生は戦争の影を受け、再び徴兵されてしまいます。

戦中の生活と最期

1941年には、少尉として召集令状を受け、舞鶴から南方へ派遣されました。フィリピンにおける戦いで参加した部隊が全滅する中、久保は1942年2月5日に戦死し、満35歳でその生涯を閉じました。

人物・エピソード

久保は映画人としての道を歩む前に、商業学校での同級生であるマキノ正博や山中貞雄と共に「卒業後に出世したなら、他の二人を助ける」という約束を交わしました。この友情が、彼を映画界に引き込む原動力となりました。さらに、久保は美男子として知られ、映画界でその美貌が評判となっていましたが、役者としての道を選ぶことはせず、監督業にこだわりました。

また、戦争による徴兵の際には、仲間たちとの送別会が開かれ、多くの友人や女性たちが涙を流して見送る姿が印象的でした。久保はその際に「花園駅での見送りは大げさにしないでほしい」と冗談交じりに言い、彼の独特な人柄を表していました。

フィルモグラフィと影響

彼の代表作には、『江戸噺鼠小僧』や『運命線上に躍る人々』などがありますが、特に後者は彼のサウンド映画における重要な位置づけとなりました。彼が関わった数多くの映画は、今もなお映画史に名を刻んでいます。彼の作品は、日本映画の発展に寄与しただけでなく、当時の社会的な背景を反映した重要な記録でもあります。久保為義の功績は、今も多くの映画ファンに愛され、語り継がれています。

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