J.O.スタヂオ

J.O.スタヂオ：黎明期の映画製作を支えた幻のスタジオ

J.O.スタヂオは、1933年に設立され、1937年に東宝に合併された、昭和初期に京都に存在した映画会社です。現在の東宝の前身の一つであり、日本の映画史において重要な役割を果たしました。本記事では、J.O.スタヂオの設立から東宝への合併、そしてその後の東宝映画京都撮影所の歴史を詳細に解説します。

設立の背景：トーキー映画への挑戦

大正時代、輸入商である大沢商会は、米国の映画撮影機やプリンターを輸入し、松竹や日活などの映画会社に販売していました。大沢商会の社長、大澤善夫は、日本の映画界におけるトーキー化の可能性に着目し、そのための準備を進めます。熊沢甚之助を米国に留学させ、トーキー技術を習得させました。

1928年、熊沢が帰国すると、大沢は太秦に現像所を建設し、トーキー映画製作への足がかりを築きます。日活との提携を模索するも、交渉は決裂。そこで大沢は、自らトーキー・スタヂオを建設し、映画会社に貸し出すという新たな事業に乗り出します。

J.O.スタヂオの誕生と展開

1933年、大沢は太秦に貸しスタジオを完成させ、「株式会社J.Oスタヂオ」を設立しました。「J.O」の名称は、「ジェンキンス・システム」のトーキー映画製作に由来し、「J」はジェンキンス、「O」は大沢商会の「O」を表しています。上野奎司、小山又右衛門、熊沢甚之助らを経営に参画させ、大沢自身も常務として指揮を執りました。

J.O.スタヂオは、太秦発声映画を設立し、日活との提携作品を製作。また、「J.O映画製作所付属J.O俳優養成所」やアニメ制作室も併設しました。P.C.L.映画製作所（後の東宝）とも連携し、円谷英二が撮影技師主任として入社するなど、優秀な人材が集まりました。

1937年には、初の日独合作映画『新しき土』を製作するなど、国際的なプロジェクトにも挑戦しました。大河内傳次郎や原節子といったスター俳優や、久保為義監督らが参加し、活気あふれるスタジオとなりました。

東宝映画京都撮影所への変遷と閉鎖

1937年8月、J.O.スタヂオは、P.C.L.映画製作所、東宝映画配給、写真化学研究所と合併し、東宝映画株式会社が設立されました。J.O.スタヂオは「東宝映画京都撮影所」となり、P.C.L.は「東宝映画東京撮影所」となりました。円谷英二は東京撮影所へ移籍し、特撮技術の確立に貢献します。

当初、東京撮影所が現代劇、京都撮影所が時代劇という制作分担でしたが、東京の施設拡充に伴い、京都撮影所は東京撮影所の補助的な役割を担うようになります。1941年9月、東宝映画京都撮影所は閉鎖され、その跡地は大日本印刷京都工場となりました。

J.O.スタヂオの遺産

J.O.スタヂオは短命に終わりましたが、日本の映画史に大きな足跡を残しました。トーキー映画の製作にいち早く取り組み、多くの才能を輩出しました。また、アニメ制作室を併設するなど、先進的な試みも行われました。J.O.スタヂオの精神は、東宝へと受け継がれ、その後の日本映画の発展に大きく貢献しました。

市川崑がアニメーターとして在籍していたというエピソードも、J.O.スタヂオの多様な側面を物語っています。

J.O.スタヂオは、日本の映画史における黎明期を支えた、幻のスタジオとして、その名を刻んでいます。

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