久米島女子工業徒弟学校

久米島女子工業徒弟学校：久米島紬の発展を支えた女子教育機関

久米島女子工業徒弟学校は、明治時代後期から大正時代にかけて沖縄県久米島に存在した、織物技術の専門学校です。特に、久米島紬の織り手を育成し、その産業発展に大きく貢献しました。本記事では、同校の歴史的背景、教育内容、地域社会への影響について解説します。

歴史的背景

久米島紬は、琉球王朝時代には「御用布」として、人頭税の対象となる重要な貢納品でした。各村落の女性たちは「布屋」と呼ばれる共同作業場で、役人の監督のもとで織物生産に従事していました。明治時代に入り沖縄県が成立した後も、この貢納布制度は旧慣として存続しましたが、1903年に地租導入とともに廃止されました。

貢納布制度の廃止を機に、地域住民は紬織物を産業として発展させる道を探り始めました。それまで賦課のために受け継がれてきた織物の技能を、商品生産の技能として伝習する試みが始まり、その中心的な役割を担ったのが久米島女子工業徒弟学校でした。

学校の設立と教育内容

1906年4月、久米島尋常高等小学校に女子実業補習科が設置されたのが始まりです。その直後、仲里・具志川両間切組合の事業として「仲里・具志川両間切組合立女子実業補習学校」が設立されました。2年制の課程では、尋常科卒業程度の女子を対象に、修身、算術、国語、裁縫、機織の5教科が教えられました。

1908年4月には、実業補習学校を拡張する形で「久米島女子工業徒弟学校」が開校しました。「機織に必要な技術を授け、島内の織物業界の発展を図るとともに、日常生活に必要な知識・技能を授け、婦徳を養う」という理念を掲げ、本科・選科（ともに2年制）を設置。国語、算術、修身・体育、機学、機織実習、裁縫、養蚕、家事・作法の8科目を学びました。機織実習では、1年次に木綿織物、2年次には久米島紬を製作しました。

入学希望者が多かったため、1910年には高機を持つ者に限って入学が許可されるようになりました。この頃、織機が地機から高機へと移行していったと考えられます。1912年には、具志川村嘉手苅に新校舎が建設され、移転しました。

学校の成果と地域への貢献

生徒たちが製作した紬織物は、博覧会や物産共進会に出品され、高い評価を得ました。1910年には九州沖縄8県連合共進会で2等賞を受賞、1914年の大正博覧会では、出品した12反のうち1反が3等、3反が入賞を果たしました。また、生徒たちは大島紬の産地を視察するなど、積極的に技術や知識を吸収しました。

1916年には久米島織物同業組合が設立され、久米島紬の生産は拡大の一途を辿りました。1922年時点での在学生は110名、1906年以来の卒業生は本科215名、研究科67名、選科207名に達し、多くの卒業生が織物産業に従事し、その発展に貢献しました。

閉校とその後

久米島女子工業徒弟学校は、1925年に惜しまれつつ廃止されました。しかし、その精神は途絶えることなく、第二次世界大戦後の久米島紬復興の際、1954年に具志川村が「具志川村女子工芸学院」を発足させ、中学校卒業後の女子に養蚕・染織・織物の伝習を行うなど、その系譜は受け継がれていきました。

久米島女子工業徒弟学校は、短い期間ながらも、久米島紬の技術継承と産業発展に大きく貢献し、地域社会に多大な影響を与えた教育機関でした。その功績は、今日まで語り継がれています。

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