久米歌

久米歌（くめうた）

久米歌、または来目歌とは、日本の古代記録に登場する歌謡で、久米部の伝統に根ざした軍歌です。この歌は、神武天皇が大和の数名の豪族を征伐した際に、久米部が歌ったとされ、宮廷の儀式で歌舞として行われました。久米歌は、『日本書紀』に8首記載され、そのうち6首が『古事記』にも記されており、当時の大和国の重要な文化的事象となっています。

概要

久米歌は、大和王権の中で久米部が近衛軍団の伴造や調理人として活躍し、戦の後の宴会で宮廷に仕えた際の歌です。歌そのものは、勇壮かつ誇り高いもので、久米舞と組み合わせて踊られ、神事や宮廷の儀礼に用いられました。今日でも、宮内庁楽部で演奏され、優雅な舞と共に神聖な場で披露されています。

『日本書紀』には、久米歌を演奏するはずの楽府に関して「古の遺式なり」との記述があります。歴史的には、天平勝宝元年（749年）に東大寺で外来音楽と共に演奏されたのが確認できる初出であり、その後は平安時代から大嘗祭や豊明節会で利用されました。久米歌の伝統は、再興された1818年以降に天皇即位の大礼にも取り入れられ、近代にも続いています。

歴史的背景

久米歌の特徴的な要素として、高木市之助が提唱したように、単なる戦士の歌ではなく、「われ」の意志を表現している点が挙げられます。歌の中に見られる「撃ちてし止まむ」といったテーマは、日々の営みの中で培われた体験を反映しています。また、久米部が農耕と狩猟を兼ねた生活を営む様子が浮かび上がります。これらの点から、久米歌は5世紀における大和朝廷の栄光と拡大を象徴する文化遺産の一部と考えられています。

しかし、その一方で、この時代の天皇が軍を率いて地方の豪族を討伐していたことは知られており、井上光貞の見解のように、歌の背景には当時の社会を反映した独立性と活力があったことが示唆されています。また、久米歌には古代の狩猟による敵に対する侮蔑や戦闘の様を表現した側面も見受けられます。

久米舞について

久米舞は、久米歌と共に演じられる舞で、2人の歌手と楽器の伴奏による演出が特徴です。舞はリズミカルで、参加者は特定の衣装や楽器を身に着け、流れるような動きで観客を魅了します。具体的には、音取や参入音声を通じて、聴衆に喜びをもたらす役割があります。舞の構成は、歌や楽器演奏を交えながら、時間をかけて進行します。

このように、久米歌と久米舞は日本の古代文化の中でも重要な位置を占めており、戦いの精神、地域のコミュニティ、そして天皇への忠誠を表現する手法として、今なお多くの人々に敬愛されています。

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