久米裕 (拉致被害者)

久米裕の拉致事件

久米裕（くめ ゆたか）は、北朝鮮による拉致の被害者として認定されている重要な人物です。彼は1925年2月17日に静岡県小笠郡で生まれ、その後東京に再居住しました。久米は教育を受けた後、陸軍の機甲整備学校に通い、終戦時にはそこで生徒として過ごしていました。戦後は静岡県伊東市役所で5年間勤めてから、建設業や運送業、金融業、そして飲料メーカーなど様々な職を経験し、1976年には民間のビルサービス会社で働き始めました。

拉致の経緯

久米が拉致されたのは1977年の9月19日、彼が52歳の時で、当時三鷹市役所で警備員をしていました。彼は宇出津という石川県の海岸で北朝鮮の工作員によって連れ去られました。この事件は「宇出津事件」と呼ばれています。拉致を実行したのは、在日朝鮮人の李秋吉であり、彼は北朝鮮からの指示を受けて久米を誘い出しました。

李は、北朝鮮の工作員「吉岡」から脅迫を受け、自身の妹が人質にとられていることを利用されてしまいます。彼は工作員としての訓練を受け、久米を拉致するための計画を練ることになりました。久米は、李に声をかけられ、密貿易の話に誘い出される形で宇出津に行くことになったのです。彼は家族との連絡を絶って生活していたため、ここでの行動がそのまま拉致に繋がりました。

拉致当日の様子

1977年9月18日、李と久米は一緒に旅館に泊まりました。宿帳には李の名前でなく久米の名前が記載され、周囲の人々に不審感を抱かせることになりました。宿泊中の二人の落ち着かない態度に旅館の女将は不安を感じ、さらに石川県警察には不審船の情報が寄せられていました。9月19日の午後、二人が旅館を出て行くときには周囲に夜出かけるような場所がない状況で、女将は挙動不審を警察に通報しました。

拉致後、李は逮捕されますが、最終的には起訴猶予処分となり、その後日本国籍を取得して自営業を営むことになりました。また、久米の消息は不明のままで、彼の行方は現在まで解明されていません。

日本政府の対応

この事件は、久米が拉致された後長い間公にはされず、北朝鮮側も拉致を認めることはありませんでした。2002年に小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問した際も、久米の件については完全に否認され、入国していないという回答が返ってきました。日本の警察機関は、指示を出した「吉田」こと金世鎬について国際手配を行ったものの、事件の真相は依然として闇の中です。

現在の状況

久米裕の安否については、今もなお不明な状態が続いています。最後に職場の同僚に連絡を取ったのは1977年の9月18日で、それ以降連絡は途絶えてしまいました。

彼の事件は、北朝鮮による日本人拉致問題の一部として、今後も解決に向けた努力が続けられる必要があります。久米の家族や友人たちは、彼がどこにいるのかを知るため、日々願っていると言えるでしょう。

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