金世鎬

金世鎬とは

金世鎬（キム・セホ、1929年生まれ）は、北朝鮮の工作員であり、朝鮮労働党の対外情報調査部に所属している上級幹部とされている。1977年に日本で発生した宇出津事件の主犯と見なされており、北朝鮮による日本における拉致及び工作活動の指導者と考えられている。

宇出津事件の背景

宇出津事件は、日本人拉致の象徴的な事件であり、その背景には北朝鮮の工作員による巧妙な策があった。この事件で、金世鎬は「吉田」という偽名を用いて活動していた。彼の指示のもと、在日朝鮮人である李秋吉は、日本国籍の独身男性をターゲットにするよう指令を受けた。

1977年8月10日、金世鎬は李秋吉に対し、「45歳から50歳くらいの男性を送り込め」と命じた。この指令は、李秋吉が顧客なであった久米裕を対象にしたものだった。その後、李は久米に密貿易の話を持ちかけ、能登半島へと誘導することに成功した。

拉致の経緯

久米裕が石川県の宇出津海岸に連れて行かれたのは1977年9月19日であった。李秋吉は、そこで待機していた北朝鮮の工作員に久米を引き渡した。この事件は、李がその後逮捕されるきっかけとなり、李は「北朝鮮の指示通りにやっただけ」と自供し、金世鎬に対する憎悪を表明した。

彼は「生きていけない気持ち」と述べ、拉致された久米裕が二度と日本に戻れないことを理解し、自らの行動の責任を痛感したと語っている。

逮捕状と国際手配

李秋吉の証言を受けて、2003年1月9日、警視庁公安部は金世鎬に対する逮捕状を発行し、国際刑事警察機構（ICPO）を通じて国際手配を行った。日本政府は北朝鮮に対し、金世鎬の所在を確認し、その引き渡しを要求しているが、北朝鮮側は当初「該当人物を承知していない」としていた。しかし、その後の交渉において、北朝鮮は関連情報提供を条件に、金世鎬の調査を行う意向を示した。

まとめ

金世鎬は「宮本明」という偽名を使い、北朝鮮の貿易会社員としての肩書を名乗って日本に潜入し、重大な犯行を行った疑いがある。宇出津事件とその波紋は、日本と北朝鮮の関係に影を落とす出来事として、現在も語り継がれている。

この事件は、北朝鮮による日本人拉致問題の重要な一部として、歴史的にも意義深いものとなっている。

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