宇出津事件

宇出津事件について

宇出津事件（うしつじけん）は、1977年9月19日に石川県鳳珠郡能登町宇出津で発生した北朝鮮による日本人拉致事件および密出国事件です。この事件は、北朝鮮工作員の金世鎬が主犯となり、日本人男性が拉致されるという衝撃的な事実を引き起こしました。

事件の背景と経過

金世鎬は「吉田」という偽名を名乗り、在日朝鮮人の李秋吉に特定の指令を与えました。その指令とは、45歳から50歳の独身男性を北朝鮮に送ることでした。この指示に対し、李秋吉は東京都内で金融業を営んでおり、顧客の一人である久米裕（当時52歳）をターゲットにしました。李は、久米に密貿易の話を持ちかけ、能登半島へ誘い出しました。

1977年9月19日、李は久米を石川県宇出津海岸まで連れて行きました。そこでは、別の北朝鮮工作員が待っており、久米を工作船に引き渡す準備が整えられていました。この日、李と久米は福井県芦原温泉を経由し、午後2時頃に宇出津に到着しました。旅館の女将は、2人の動揺した様子や不審な行動に気付き、通報しました。

事件発覚とその後

事件が発覚したのは、夜間に2人が旅館を出た際でした。女将は、李と久米の異常な行動を不審に思い、能都警察署に通報しました。その後、李は逮捕され、現場からは乱数表や暗号解読表といった証拠が押収されました。李は取調べで「北朝鮮の指示に従って行動したが、事件の重大さを今は痛感している」と供述しました。

この事件の結果、石川県警察の警備部は乱数表の解読に成功し、1979年には警察庁長官賞を受賞しました。しかし、その情報は長年にわたり秘匿され、日本海沿岸地区の防犯意識を低下させた要因となりました。

繰り返される問題

久米裕の拉致事件は、1978年のアベック拉致事件やその他の拉致事件の影響で未だに世間の注目を集めることは少なく、その影響は限られたものでした。2002年の小泉純一郎首相の北朝鮮訪問時に、北朝鮮側は久米の拉致を否定しました。事件の主犯である金世鎬は国際的に指名手配されましたが、未だに逮捕されていません。

まとめ

宇出津事件は、日本における北朝鮮による人権侵害の一端を示すものです。事件の背後には、巧妙かつ計画的に行われた工作があったことを強調する必要があります。また、国民の防犯意識を高めるためには、未解決の事件に対する関心を持ち続けることが重要です。今もなお、この事件を忘れずにいられる社会であるべきです。

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