乙女が彩る恋のエッセンス

『乙女が彩る恋のエッセンス』は、アダルトゲームブランド「ensemble」が2016年 3月25日に発売した、PC向けの18禁恋愛アドベンチャーゲームです。同ブランドの「乙女シリーズ」としては第5作目にあたり、女装する男性が主人公となるジャンルの作品です。発売から約8ヶ月後の2016年 11月25日には、本編の後日談などを収録したファンディスク『乙女が彩る恋のエッセンス〜笑顔で織りなす未来〜』もリリースされています。

ゲームシステム

本作は、マウス操作によってテキストを読み進め、ストーリーを進行させていく一般的な形式の恋愛アドベンチャーゲームです。物語の中で選択肢が登場し、それによってヒロインとの関係性が変化し、エンディングが分岐するシステムを採用しています。攻略可能なヒロインは5人用意されています。

物語のあらすじ

主人公である千原直人は、調理専門学校に通いながら、名門財閥・天城家で料理人として働いています。千原という姓は彼を引き取った養父母のもので、幼い頃に離れ離れになった実の両親の記憶を僅かに持ち続けています。

ある時、彼が勤める天城家の一人娘、天城咲夜が在籍する舞城女学園で、調理師のポストに欠員が生じます。舞城女学園は厳格な男子禁制の全寮制学園であるため、調理師も女性である必要がありましたが、適任者が見つかりません。そこで、異例の措置として、直人が一時的に派遣されることになります。直人は学生寮の臨時コックという表向きの役割に加え、短期編入生「朝倉千弘」として女装して学園の敷地に足を踏み入れます。学園長の菱川琴枝は、この裏事情を知らされぬまま、千弘としてやってきた直人を温かく迎え入れます。

一方、舞城女学園は名門校として「全国紅花連盟」に加盟しており、その伝統行事である「お出迎え会」の開催校に選ばれていました。学生会メンバーである咲夜たちは、この大役に向けて準備に追われる日々を送っていたのです。

登場キャラクターと制作スタッフ

本作の個性豊かなキャラクターたちは、庄名泉石氏（朝倉千弘、天城咲夜）、浅海朝美氏（夏目あかり）、武藤此史氏（千原乃亜）、zinno氏（牧瀬皐月、氷堂芹香）といった複数名の原画担当によって描かれています。シナリオは甲二氏と水瀬拓未氏が担当し、物語を紡ぎます。音楽はミリオンバンブー、ディレクターは真田昌樹氏、プロデューサーは夏月氏がそれぞれ務めました。

作品を彩る主題歌は、オープニングテーマ「笑顔のレシピ」とエンディングテーマ「イロドリ」をDucaが担当しています。ファンディスク『笑顔で織りなす未来』の主題歌も、オープニングテーマ「キミと…」とエンディングテーマ「Hello, Future!」をDucaが歌唱しており、楽曲制作にはNekusam氏、chokix氏、ANZIE氏らが関わっています。

関連コンテンツと反響

本作の発売を記念して、過去の乙女シリーズの女装主人公たちが共演するミニゲーム「女装主人公集合DLミニシナリオ第3弾」が期間限定で配布されました。また、初回版の特典として、シリーズの枠を超えてヒロインたちが登場するショートストーリー集「乙女シリーズオールスターディスク01」が付属しました。この特典ディスクには、「メイドの作法」「まんまるふわふわほんわか会談」「学園のカリスマ達」「逆女子会トーク」「ぶっちゃけ! 昭江さん相談室!」といった、個性的なエピソード全5話が収録されています。

他の女装ゲームとのコラボレーションも行われ、ファンディスク発売時には、ぱれっとクオリアの『オトメ*ドメイン』とのコラボレーションとして、同作の主人公・飛鳥湊が舞城女学園に来校し、主人公・千弘と出会う内容のミニADVが期間限定で配信されました。

市場での反響としては、本編は発売月の2016年3月にはGetchu.comとアダルトゲーム月刊誌『BugBug』の集計で共に4位を記録し、一定の売り上げを見せました。年間ランキングではGetchu.comで43位、BugBugでは上位圏外となりました。ファンディスク『笑顔で織りなす未来』も発売月の2016年11月には両サイトで7位となり、こちらも初動は好調でしたが、年間ランキングでは両サイトとも上位圏外でした。

人気投票では、本編が発売月のGetchu.comで5位にランクインしましたが、年間人気投票では各サイトとも上位圏外となる中、萌えゲーアワードでは49位に位置づけられました。ファンディスクは発売月、年間共に各サイトの人気投票で上位圏外となっています。

『BugBug』誌上でのファンディスクのレビューでは、主人公やヒロインの衣装バリエーションの豊富さが評価され、特にそれがエッチシーンのCGにも反映されている点が特筆されました。学園長との後日談シナリオでは、主人公の生い立ちや家族の絆が丁寧に描かれ、レビュアーは「胸が熱くなった」と述べています。また、本編ではセリフのみだった主人公の義母がCGで登場したことも喜びをもって受け止められています。総じて、女装主人公ものの魅力的な要素をしっかりと盛り込んだ作品として肯定的な評価がされています。

本作は抱き枕カバーやタペストリーといった関連グッズも複数製作されています。また、本作の主人公である朝倉千弘は、後にensembleから発売された『乙女が結ぶ月夜の煌めき』（2018年）、『シャイニー・シスターズ〜女装主人公アイドルプロジェクト〜』（2019年）、『星の乙女と六華の姉妹』（2021年）といった他のシリーズ作品にも登場しています。

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