乙女の密告

乙女の密告

『乙女の密告』は、日本の作家赤染晶子によって書かれた小説で、登場人物たちの青春と倫理、真実の追求をテーマにしています。この物語は2010年の芥川龍之介賞を受賞し、2010年6月号の「新潮」に初めて掲載されました。作中では、有名な『アンネの日記』が重要な役割を果たし、主人公たちの心の葛藤が描かれています。

登場人物

• - みか子: 主人公で、京都の外国語大学のドイツ語学科に在籍する2年生。「アンネの日記」の熱心な愛読者。
• - 麗子: 年齢不詳の4年生。スピーチコンテストに参加する努力家。
• - 貴代: みか子と同学年、ドイツから帰国した女子学生。
• - 百合子: 妊娠スチュワーデスを目指して就職留年中の実力者。
• - バッハマン教授: 独特の教授で、生徒たちを「乙女」と呼ぶ。

あらすじ

物語は、京都にある外国語大学を舞台に展開されます。2009年11月、バッハマン教授が授業に乱入し、学生たちに『アンネの日記』の暗唱課題を提出します。みか子は、日記の中でアンネにとって特に重要な日を尋ねられ、彼女がペーターと初めてキスを交わした日である1944年4月15日を挙げます。一方、教授は生と死の狭間を象徴する1944年4月9日を指摘し、二人の意見は食い違います。

教授の授業で、みか子を含む“乙女たち”は必死に準備してくるも、誰一人として課題を無事に暗唱することができず、教授の怒りを買います。そこで、麗子が黒ばら組のリーダーとして指導に立ち、自主トレを開始しますが、急速に悪化する噂が彼女の身に降りかかります。

麗子に関する噂が広まり、彼女は黒ばら組のリーダーを解任されてしまいます。みか子は麗子に心を寄せながら、彼女の潜む真実を探り続けます。ある日、みか子は教授の部屋で彼が宝物のアンゲリカ人形に話しかける姿を目撃し、興味を抱きます。
しかし自分が密告者となることを恐れ、正義と友情の間で揺れ動く心情を抱え、さらなる混乱が巻き起こります。

教授が大切な人形の誘拐にショックを受けて休講になった際、みか子は無実を証明するためにドイツ語の暗唱に挑みますが、またしても詰まってしまいます。麗子が密告犯として名指しされ、しかし彼女は自身の過去と向き合うことを決意します。最後に、麗子は自分から人形を預け、みか子との別れを告げて姿を消します。

冬休み明け、教授はみか子の自宅を訪れ、アンネの過去や忘れられない悲劇について語ります。コンテスト当日、麗子は姿を見せず、みか子は恐れながらも自分の思いを暗唱することに挑みます。彼女は、アンネが希望していたこと、他者になりたいという気持ちを込め、一世一代の告白をすることになります。

この物語は、若い女性たちの可能性と苦悩を描くと同時に、歴史の重みをしっかりと受け止めながら生きることの大切さを教えてくれます。

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