乙字湯

乙字湯（おつじとう）

乙字湯は、日本で考案された漢方薬の一種で、主に痔の治療に用いられます。

概要

乙字湯は、江戸時代の医師である原南陽が著した「叢桂亭医事小言」に記載された処方を基に、浅田宗伯が改良したものが、現在一般的に用いられています。処方の名前は、原南陽が考案した戦陣で活用できる一連の処方（甲字湯、乙字湯、丙字湯、丁字湯）の2番目に当たることに由来します。

適応

乙字湯は、比較的体力がある人で、以下の症状に効果が期待できます。

痔核
脱肛
肛門出血
痔の痛み

組成

乙字湯は、以下の生薬で構成されています。

トウキ
サイコ
オウゴン
カンゾウ
ダイオウ
ショウマ

これらの生薬が組み合わさることで、下腹部の炎症を抑え、止血、血行改善、患部の引き上げ、便通改善などの効果が期待できます。特に、サイコとショウマは患部を持ち上げる作用、トウキは血行を促進する作用、トウキとダイオウは便秘を改善する作用があると考えられています。

効果について

乙字湯を創薬した原南陽や浅田宗伯は、痔の他に、肛門や陰部の痛みや痒み、神経症や自律神経失調症にも効果があると述べています。浅田宗伯は、甘草の量を増やすことで効果が高まると指摘しています。

その他の乙字湯

ダイオウを下痢しやすい人向けに省いた「乙字湯去大黄」や、トウキ、ボタンピ、トウニンを加え、ダイオウをドクダミに変更した大塚敬節の乙字湯もあります。

脚注

乙字湯を使用する際は、専門家（医師や薬剤師）に相談し、自身の体質や症状に合った適切な判断を仰ぐことが重要です。

参考文献

原南陽. “叢桂亭医事小言” (PDF). 須原屋安次郎/早稲田大学図書館古典籍総合データベース.
浅田宗伯(惟常)口授. “勿誤薬室方函口訣”. 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ.

関連項目

ツムラ - 乙字湯エキスを配合した医薬品を販売しています（3番）。
補中益気湯 - 乙字湯と同じように、患部を持ち上げる作用があり、痔の治療に用いられることがあります。
麻杏甘石湯 - 痔の治療に用いられることがあります。
大黄牡丹皮湯 - 痔の治療に用いられることがあります。
水戸藩

外部リンク

原南陽. “叢桂亭医事小言” (PDF)
* 浅田宗伯(惟常)口授. “勿誤薬室方函口訣”

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