九一式十糎榴弾砲

九一式十糎榴弾砲の概要

九一式十糎榴弾砲は、大日本帝国陸軍が1930年代初頭に採用した榴弾砲で、日中戦争や第二次世界大戦において主力として使用されました。本砲は特に師団の砲兵部隊によって運用され、またその派生型として機動九一式十糎榴弾砲も存在します。

背景と開発経緯

第一次世界大戦を経て、各国は従来の75mm級野砲に加え、100mm級の軽榴弾砲の導入が必要だと認識しました。日本陸軍も同様の必要性を感じ、1920年に新型榴弾砲の開発に着手しました。1924年にフランスのシュナイダー社に試製を依頼し、1930年には最初の試製砲が完成しました。

試製砲は一度の試験を経て、1931年に九一式十糎榴弾砲として仮制式が制定され、その後、条件通りに300門の発注が行われました。1933年には制式化され、国産化も進められました。

構造と性能

本砲は、通常の水平鎖栓式閉鎖機を採用し、装薬は可変式の分離薬筒が使用されます。射撃精度や性能は同世代の他国の砲と比べ、特筆すべき優位点はないものの、設計は軽量であると言えます。また、デザインは近代的ですが、日本の兵士にとっては体格に合わない部分が多く、各部の人間工学に欠けると指摘されることがありました。

1936年から本格的に部隊に配備され、1940年以降は特に本砲の生産が推進されました。しかし、国力や戦局の変化により師団砲兵の装備は混成となり、75mm野山砲と九一式十糎榴弾砲が組み合わせて使用されることが多くなりました。

貫通力

貫通力については、徹甲弾使用時においても鋼板を貫通させる能力があり、距離に応じて貫通能力に差が見られました。敵の中戦車や軽戦車に対しても効果があるとの報告が多数ありました。一方、三式穿甲榴弾では更なる貫通力が示され、実際の戦闘においては一定の成功を収めていました。

機動型の開発

1933年には戦車師団向けに機動化の計画が進められ、1935年には機動九一式十糎榴弾砲として制式化されました。自動車牽引が想定され、これに伴い放列砲車の重量は増加しましたが、牽引速度は40km/hを実現しました。結果的に運行重量は軽くなり、機動性の向上が図られました。

まとめ

九一式十糎榴弾砲は、その優れた運用性から、日中戦争や太平洋戦争において重要な役割を果たしました。設計の特性や性能、そして時代背景を考えると、陸軍の主力火器としての地位を確立した意義は大きいと言えるでしょう。

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