九一式繋留気球

九一式繋留気球について

九一式繋留気球は、大日本帝国陸軍によって開発された偵察用の気球であり、別名「九一式偵察気球」とも称されます。この気球は、1927年に陸軍がフランスから招聘したコルモン技師の指導のもと、日本の材料を用いて試作され、同年10月には初の2機が完成しました。基本的な性能試験を行い、1928年から1930年にかけて実用試験が実施された結果を受けて、1931年には正式に「九一式繋留気球」として制式化されました。

開発の背景

九一式気球の開発は、その時期の陸軍にとって重要な偵察手段の一つでした。特に日中戦争の頃には、独立気球部隊に配備され、実際に戦闘にも用いられました。具体的には、1937年の石家荘会戦や広東攻略戦など、さまざまな戦闘でその姿を見ることができます。復員は1939年2月に完了し、その後もノモンハン事件などで使用されました。

設計と構造

九一式繋留気球は、1925年に陸軍がフランスから輸入したBD型繋留気球を基にしています。そのため、初期の段階ではBD型と呼ばれていましたが、後に九一式に改称されました。外観は、魚形の気嚢に安定舵嚢が付いており、一型繋留気球と似ていますが、具体的な設計には違いがあります。気嚢の位置や形状には独特な工夫があり、特に引裂弁やガス弁の配置が挙げられます。

気嚢は可変容積式で、水素を充填する方式が採用されています。また、乗員は2名で搭乗可能な設計となっており、吊籠内には航空写真機などの装備が整っていました。気球の運用には、専用の繋留車両が必要で、その重さは約5,300kgに達し、周辺器材も数十台に及んでいました。このため、行軍時には障害物を通過する際の難しさが問題視されていました。

諸元

九一式繋留気球の諸元は以下の通りです。

• - 全長: 31.20 m
• - 気嚢最大中径: 8.54 m
• - 全高: 19.67 m
• - 気嚢容積: 1,200 m3
• - 自重: 624 kg
• - 昇騰高度: 1,500 m（乗員1名時）、1,200 m（乗員2名時）
• - 搭載量: 187 kg（乗員1名時）、257 kg（乗員2名時）
• - 乗員: 2名

記載参考文献

この情報は、佐山二郎の著書『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』や秋本実の『日本陸軍試作機大鑑』などから引用されています。これらの文献を通じて、九一式繋留気球の歴史や技術的な詳細、運用状況について更に深く学ぶことができます。

九一式繋留気球はそのユニークな設計と運用の歴史から、大日本帝国陸軍における重要な航空技術の一つといえます。

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