九三式防空気球

九三式防空気球

九三式防空気球は、大日本帝国陸軍が開発・運用した無人の阻塞気球（防空気球）です。1930年代初頭から開発が始まり、都市や要地の防空を目的として配備されました。

開発の経緯

陸軍は1931年（昭和6年）より、列強各国の軍用気球に関する調査研究を開始し、防空に特化した気球の必要性を認識しました。1932年（昭和7年）頃から開発が始まり、1933年（昭和8年）3月には設計に着手、「試製阻塞気球」として試作品が製作されました。基本審査と実用試験の結果、防空用としての実用的な性能が認められ、1934年（昭和9年）1月に仮制式、あるいは同年3月頃に「九三式防空気球」として制式採用されました。

運用

1935年（昭和10年）度の関東軍冬季気球試験演習への参加を皮切りに運用が開始され、それまで防空気球に転用されていた偵察用繋留気球を置き換えました。当初の想定用途は都市や要地の夜間防空でしたが、1941年（昭和16年）3月には輸送船団の防空への適性を測る実用試験も行われました。調達は1942年（昭和17年）頃まで続けられ、一部は民間にも払い下げられました。

設計

設計にあたっては、輸入された外国製気球も参考にされましたが、製造は国産材料のみで行われました。構造の単純化と戦時中の大量生産が考慮されており、上下構造の共通化や、ゴム球皮を用いた魚形気嚢が採用されました。気嚢は可変容積式で、容積変動に対応するためのゴム紐が下部両側面に設置されています。尾部には浮揚ガスの放出弁のほか、方向舵嚢と安定舵嚢が取り付けられています。同時期の偵察気球と比較して、舵嚢が大面積であること、方向舵嚢に風受けがあることが特徴です。

昇騰は1基単独で行うほか、2基連結させて高度を上げることも可能でした。また、30m/sの風速下でも安全に昇騰させることができました。

諸元

全長: 19.29m
気嚢最大径: 7.28m
気嚢最大容積: 450.0m³
重量: 約160kg
標準昇騰高度: 2,500m（1基）、4,000m（2連）
繋留索全長: 4,300m（1基）、6,300m（2連）

参考文献

佐山二郎『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』潮書房光人新社、2020年、164,213,217頁。ISBN 978-4-7698-3161-7。
秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年、141頁。ISBN 978-4-87357-233-8。

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