九三式陸上攻撃機

九三式陸上攻撃機について

九三式陸上攻撃機（きゅうさんしきりくじょうこうげきき）は、日本海軍の陸上攻撃機であり、三菱航空機が設計・製造を担当しました。当初、この機体は双発の艦上攻撃機として開発されましたが、最終的には陸上機として採用された経緯があります。日本海軍では初めての大型陸上双発機とされつつも、生産数は控えめで、試作機も含めてわずか11機（あるいは14機とする説も）しか生産されませんでした。

歴史的背景

1923年に締結されたワシントン海軍軍縮条約の影響で、日本海軍は当初の構想を変更せざるを得なくなりました。この条約により、1万2,500トン級の正規航空母艦建造計画が見直された結果、より大型の航空母艦「赤城」と「加賀」が整備されました。これらの大型航空母艦の運用が可能になることで、海軍は新たに大型双発攻撃機の開発を計画しました。

開発は1929年に始まり、三菱に対し試作が依頼されました。設計にあたり、ブラックバーン社から招聘された技師の指導を受けつつ、三菱社内の松原元と由比直一が担当しました。しかし、初期の設計には欠陥が指摘され、開発は遅延します。1932年になって試作第1号機が完成し、全幅20メートルに達する大きな複葉機が誕生しました。搭載されたエンジンは国産初の14気筒発動機A-4（後の金星旧型）で、艦上での運用に向けて著しく小型化されました。

開発の問題点

テスト段階で方向安定性の不足やエンジンの出力不足が発覚し、機体のサイズも航空母艦上での運用に向かない点が多く見受けられました。海軍は改修を指示しましたが、長期間の改修を経て、結局九三式陸上攻撃機としての道を選ぶことになります。しかし改修中に他の高性能機の開発が加速し、試作機を含めた生産数はわずかにとどまりました。

設計上の教訓

九三式陸攻は、当時の連合艦隊から求められていた仕様、「艦上攻撃機は数トンの爆弾を搭載、数時間の航続時間が必要」であったため、設計には大きな課題がありました。双発機の必要性と複葉式の選択が影響していましたが、設計変更の際、一部の設計者が基礎からダイナミクスの理解を持たないまま簡易な改造を加えてしまったため、性能が劣化しました。これにより、その結果を教訓として、今後の設計に生かされることとなりました。

エンジンの問題

九三式陸攻に搭載されたエンジンは三菱製の「金星」旧型でしたが、このエンジンは油漏れの問題が多く、性能も航空母艦への搭載には不適切でした。こうした運用面の問題により、最終的に生産機数は限られ、わずか20機未満で打ち切りとなりました。

仕様

• - 全長: 12.80 m
• - 全幅: 19.20 m（主翼は後方に折畳み可能）
• - 全備重量: 6,350 kg
• - エンジン: 三菱A-4 空冷星型14気筒 640 hp
• - 最大速度: 240 km/h
• - 航続距離: 1,420 km
• - 武装: 7.7mm機銃×3、魚雷または爆弾800 kg
• - 乗員: 3～5名

九三式陸上攻撃機は一時代を象徴する存在ではありましたが、実際の運用では限界が多かったため、その教訓は後の航空機設計にも活かされることとなります。

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