九二式五屯牽引車

九二式五屯牽引車の概要

九二式五屯牽引車（きゅうにしきごとんけんいんしゃ）は、大日本帝国陸軍が1933年に制定した砲兵牽引車両です。初期型の甲型はガソリンエンジンを搭載しており、後にディーゼルエンジンを搭載した乙型が登場します。この車両の牽引能力は約5トンです。

開発の背景

この牽引車は、九二式十糎加農砲の運搬を主な目的に開発されました。それ以前に採用されていた三屯牽引車を置き換えることを目的とし、強化された能力とコストダウンが求められました。1931年に開発方針が決まった後、自動車工業株式会社によって設計と製作が進められました。試作車は、各地の異なる地形での性能試験を受け、その結果は概ね良好でしたが、一部の問題点が指摘されました。特に軽量化と重心位置の改善が必要とされました。

性能と構造

車両は、エンジンが前方に配置され、中央に操縦室、後方にウィンチを備えています。最大乗員数は6名で、燃料タンクを含む、運行に必要な燃料は180リットルで、時速10キロで連続10時間の行動が可能です。主なエンジンは、スミダD6A型水冷直列6気筒ガソリンエンジンで、出力は98馬力です。このエンジンは夏の厳しい条件でも使用に耐える冷却能力を持っています。

走行機構には片側9個の転輪や誘導輪が用いられ、排土機能や履帯のテンション調整ができる構造になっています。車両の牽引能力は5トンで、急な坂も克服できる性能があります。特に、40cmの水深を渡る能力を持つ点も注目です。

ディーゼル化と改善

1935年からはディーゼルエンジンへの改造が始まり、全車両をディーゼル化する方針が立てられました。自動車工業株式会社は海外の技術を取り入れながら、信頼性の高いディーゼルエンジンを開発しました。この改変により、耐久性が向上し、性能も維持されています。

その他の特性

この車両には、履帯の外れやすさや不整地での操縦の難しさといった欠点もありました。特に泥や草地での操作には注意が必要で、一度履帯が外れると修復には時間がかかることが指摘されています。

仕様

• - 自重: 4.8トン
• - 全長: 3.55メートル
• - 全幅: 1.80メートル
• - 全高: 2.45メートル（幌展張）
• - 最低地上高: 0.3メートル
• - 牽引フック地上高: 0.55メートル
• - ウィンチ許容荷重: 2.5トン
• - 履帯の接地圧: 0.52 kg/平方cm

九二式五屯牽引車は、その実用性と使いやすさから、大日本帝国陸軍の主要な牽引車両として重要な役割を果たしました。

もう一度検索